導入事例
一般社団法人 日本LD学会
eラーニング研修で、LD(学習障害)のアセスメントを的確に!
一般社団法人 日本LD学会明星大学発達支援研究センター 客員教授
明星大学診療所 管理医師 小野 次朗 様
一般社団法人日本LD学会 LD-SKAIP委員会 委員
明星大学発達支援研究センター 研究員 岩本 友規 様
2021.4.22
1992年設立。LD(学習障害)を対象の中心とした学術研究団体。会員は1万人以上。小学校・中学校の教員が過半数を占め、ほかに大学の研究者、心理専門職、幼稚園教諭、保育士なども参加しています。LDに留まらず、併存するADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)などの支援も行っています。
同学会が開発したアセスメントツール「LD−SKAIP」などを利用した課題の発見・評価、そして困っている児童を的確な指導・支援へ繋げることを目的としています。
- 研修の受講者を増やしたい。
- 研修会場へ遠方から足を運ぶ際の時間的・費用的コストがかかる。
- 利用者にITに不慣れな方もいる。
- オンラインで、時間と場所を選ばず受講できる。
- 受講者の移動時間、移動や宿泊にかかる経費の負担軽減。
- ITやデジタルに不慣れでも扱いやすいインターフェイス。
- 受講者の増加、ライセンス取得者が増えることで、その結果、支援できる児童が増える。
学習障害の児童に、適切な支援を!
━ LD(学習障害)とは、どのような状態のことを指すのでしょうか?
外から見て気づきにくい発達障害のひとつです。読み書き算数などの能力の習得が困難な状態を指します。
[小野様]
発達障害のひとつで、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論するといった能力に関して、特定の課題の習得に困難が生じる状態です。
ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)に比べると、一般的な注目度はやや低いと思われます。
それは、症状が表に出にくいことが一つの要因と考えられます。保護者や教員もなかなか気づく事ができません。
そこで、LDかどうかを客観的にアセスメントすることが必要となります。そのツールのひとつが、当学会が開発した「LD-SKAIP」です。
児童でも扱いやすいタブレット(LD-SKAIPの場合はiPad)を使用して、LDのアセスメントを行なうのです。
すなわち、LDで困っているという児童に私たちが早く気づいて、適切な支援が行えるようにすることを目的としています。
━ できるだけ早い段階でLDの有無に気づいて、支援につなげることが大切ですね。
「LD-SKAIP」などのアセスメントツールを使って的確に評価し、その児童に合った支援に繋げます。
[小野様]
先ほども申し上げたように、LDは発達障害の中でも気づかれにくい状態です。小学1年生で学習障害に気づくのは至難の業です。例えば、文章を読むときに一文字一文字を逐語読みしたり、単語をまとまりとして読めなかったり、あるいは語彙力が不足しているなど、さまざまな原因が考えられます。
一方で、勉強の成績が標準かそれ以上の児童のなかにも学習障害の子が含まれていることがあります。そういう場合は、その子が持っている力がうまく発揮されていないことになります。その子たちも実はすごくしんどい思いをしている事が予想されます。
そこで、「LD-SKAIP」のようなアセスメントツールを使って児童ごとに評価を行なうことで、その子が本当に困難な部分を明らかにする必要があります。困難となっている課題の数や程度は人それぞれなので、支援の方法もいろいろです。
例えば、文字の手書きが困難な児童で、克服することが難しければ、タブレットやパソコン入力で代用するなど、その子に合った支援の仕方を考える必要があります。LD-SKAIPでは、その子どもたちに適した支援方法も提案してくれます。
━ ではやはり、小学校低学年で「LD-SKAIP」が利用されているパターンが多いのでしょうか?
利用を広めるのはまだまだこれから。そのためにもeラーニングを活用して研修機会を増やしていきます。
[小野様]
もっと利用していってもらいたい、もっと広がって欲しいというのが実情ですね。学習障害のある児童が、「自分はできない」という思い込みを持ってしまう前に、こうすればできるんだと伝えられると、大げさに言えば、その後の人生が変わってきます。
そのための「LD-SKAIP」なのですが、これまでの現状ですと、研修する場所や時間などの制約があり、このツールを使える人を増やすことが難しかった。「LD-SKAIP」には1〜3までのステップがあり、2と3を行なうにはそれぞれに研修が必要で、受講してはじめて使用できる認証を得られるのです。
2017年に「LD-SKAIP」のシステムが完成して、2018年にその研修を行ないました。まずは、学習障害に対してある程度の知識がある「S.E.N.S(特別支援教育士)」の資格を有する方からはじめました。会場を用意して、受講者の皆さんがタブレットを持って実際に使いながら研修を進めるという方法なので、1回に受講できる人数は限られます。
結局、1年間で修了できるのはせいぜい200〜300人。
「S.E.N.S(特別支援教育士)」
を持っている方は約5,000人いらっしゃるので、全員が研修を終えるのに何年かかってしまうんだ、という状況でした。なので、多くの人が時間的な制約なしに学ぶことができるeラーニングの導入は必然でした。コロナ禍前から、その方針は模索していたのです。
━ そこで、learningBOXを導入していただいたということですね。どのようなきっかけだったのでしょうか?
情報収集のために展示会へ。機能面とコスト面からいくつか候補を絞りました。
[岩本様]
前職までシステムの構築などに関わっていた私が中心となり、検討することになりました。当学会の中で事例があまりなかったので、まずは情報収集を行ないました。
ウェブ等でも情報を拾うことはできますが、商品を見るだけではなく、リリースしている企業の対応や雰囲気も大切だと思い、展示会に足を運びました。そこで機能面とコスト面でいくつか商品をピックアップした中にlearningBOXがありました。
━ その中で、learningBOXを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
親身になっていただけそうな雰囲気と、ITに馴染みがない人でも扱いやすいシステムはほかにありませんでした。
[岩本様]
まず、会場でとてもあたたかく対応していただいたのが嬉しかったですね(笑)。その場でいろいろな相談にも乗っていただいて、技術的な面もかなり詳しくご説明いただいたのです。
ビジネスライクな雰囲気ではなく、とにかく親身になっていただけそうだなと。もちろん、価格的な部分やカスタマイズ性、必要な機能だけを提供いただけたり、すごく使いやすく改修された商品だなと、私自身が操作してみてすごく感じました。
また、受講者の方の中には、ITに馴染みがない方もいらっしゃるので、そういった方々にも使いやすいインターフェイスだという点も重要でした。
learningBOXはフォルダ構成で視覚的にわかりやすく、操作しやすいのではと考えました。
━ 導入して、どのような効果がありましたか?
研修会場までの移動時間と費用、宿泊費など大幅にコスト削減。時と場所を選ばないことは大きなメリットです。
[小野様]
当然、受講可能な人数が増えました。それでも導入1年目は、あっという間に定員に達してしまい、希望者全員が受講できなかったほどです。多く受講していただければそれだけ我々も嬉しいので、より安定的な運営を考えました。
受講者が時と場所を選ばない、これは大きいですね。今までですと、東京や大阪などの会場までの移動時間や費用、宿泊費もかかっていましたから。何より、受講者数が増えて「LD-SKAIP」を使える方が増えることは、学習障害のある児童にとって福音になっていきます。
━ 利用されている方から、疑問やご要望などはありますか?
驚くほど質問は少ないです。運営側も少人数で管理できるので助かっています。
[岩本様]
使い方に関しては、驚くほど質問は少ないですね。研修を始めていただくと、あとはもう基本的には問題なく動画も見られて、スムーズに受講できているようです。
運営側が少人数で管理できるのも、learningBOXのわかりやすさのおかげだと、本当にありがたく思っています。
我々の設計の仕方や受講者へのアナウンスという点で反省することはありましたが、システムの面では問題なく運用できています。
━ ありがとうございます! ほかに、課題やこんなことができれば良いのに、といったことはありますか?
児童の人生に影響するライセンス。受講者がしっかりと学習できたという保証があると安心です。
[小野様]
今後は、「S.E.N.S」資格取得者以外のLD学会員、さらに一般の方々にまで「LD-SKAIP」の利用者を広げていきたいと考えています。そのような裾野の広がりは反面、高い志を持った方ばかりが研修に参加されるとは限らなくなってきます。
知識を有していないのにライセンスを取得できてしまうと、それは児童に対してとても失礼なことですよね。単に情報を流すだけではなく、受講者がしっかりと学習をしたという保証をしてくれるようなしくみがあると安心です。
LDに対する十分な知識を持っていなければ、間違った支援に繋がってしまう。それは避けなければなりません。質をどう担保するかは大変重要なのです。
今はオンデマンドで提供していますが、例えばリアルタイムで配信して最後にきちっとテストをするとか、その時にしか発信できない情報にアクションしてもらうとか、顔認証をうまく利用できないかなど。いろいろ考えられますよね。
━ 子どもたちのために!という熱い思いに圧倒されます! LD学会様をたくさんの人に知ってもらいたいですね。
LDの理解促進のためにも「LD-SKAIP」を広めたい。そのためにも龍野さんに期待しています。
[小野様]
私は小児科医で、さまざまに経験してきた中で学習障害を理解する重要性をとても感じています。理解を促進させることができれば、みんなが困っている児童に気づけるようになる。
苦手なことを苦手と言えて、得意なことを頑張れる、生きやすい人生を送れる世の中になるのではないでしょうか。
「LD-SKAIP」に関わる機会をいただいて、最終的に支援に繋げるための大きなツールになるなと期待している分、質もしっかりと担保していきたいと思っています。龍野さんにはぜひ、そのための知恵と技術を提供していただきたいですね。
━ あとがき
今回の、日本LD学会様の導入事例インタビューはいかがでしたでしょうか。お二人の貴重なお話と使命感に触れることができ、とても感銘を受けました。発達障害の中でも、気づかれにくいLD(学習障害)。もしかして、私たちの身近にも困難を抱えている人がいるかもしれません。
その早期発見を可能にする「LD-SKAIP」は、多くの人にとって必要なアセスメントツールです。
それを扱う方々の研修にlearningBOXをご利用いただいているということ、とてもうれしく思うと同時に身の引き締まる思いです。
これからも、少しでも質の高い学びのツールとなるよう、お力添えさせていただきます。
この度は、お忙しいところお時間をいただき、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
小野次朗様、岩本友規様、インタビューにお応えいただき、ありがとうございました。