年間2万人の学びを支える手話教材を次のステージへ|クラウド化で持続可能な教育基盤
「社会福祉法人全国手話研修センター」は、手話通訳者・手話奉仕員の養成、手話通訳者全国統一試験や全国手話検定試験の実施、手話の普及啓発など、手話に関する幅広い事業を展開しています。手話奉仕員養成テキストの動画教材をDVDだけでなくクラウドでも提供できるよう、2023年にlearningBOXを導入。以来3年間、年間約2万人が利用する教材の販売・管理を少人数体制で運用しています。全国どこでも、いつでも手話を学べる環境づくりは、手話奉仕員養成という社会的役割を担う同センターにとって、単なる業務改善にとどまらない意味を持っています。導入の経緯や活用法、手話普及への展望を伺いました。
- DVD教材では学習者の視聴環境に制約があった
- 書籍とDVDのセット管理・在庫作業の負担が大きかった
- 年間2万人分の入金確認を人手で行うのは困難だった
- 複数の職員間でお客さま対応を共有する仕組みがなかった
- スマートフォンでいつでもどこでも学習できる環境が整った
- 物理的な教材の在庫管理から解放された
- 入金確認業務を想定処理の10%未満まで削減できた
- 複数職員での対応共有に加え、教材の質向上も実現した
- 自社で教材の追加・更新ができる柔軟性があった
- 初期投資を抑えられる料金体系だった
- 利用実績に応じた手数料体系が業務規模に合っていた
- 対面で相談しやすい距離感と提案内容の具体性があった
クラウド教材の導入による視聴環境の向上
eラーニングシステムを導入することになった経緯についてお聞かせください。
秋山様:当センターでは、厚生労働省の手話奉仕員養成カリキュラムに準じたテキストを発行しています。2014年に発行したテキストでは、動画教材としてDVDをセットにして販売していました。
しかし近年、インターネット環境の普及やスマートフォンで手軽に動画を視聴できるようになったことから、視聴環境の向上を目指したいと考えました。
こうした変化を踏まえ、2023年に発行を予定していた『手話奉仕員養成テキスト 手話を学ぼう 手話で話そう 全面改定版』では、動画教材について、DVD形式からクラウド教材への切り替えを視野に入れ、システム導入の検討が始まりました。

導入前に、運営上で特に負担が大きかった業務は何でしたか?
竹井様:テキストとDVDをセットで販売していた際の負担でいうと、商品管理の部分ですね。書籍にDVDを貼り付ける際、事前に貼り付けてストックをしたいところですが、書籍の形が崩れる原因になるため、販売状況に応じて作業をしていました。
8社で見積り比較、予算面の合致と提案の具体性が決定打に
learningBOXを知ったきっかけと、選定の経緯を教えてください。
秋山様:当法人の役員から東京の企業の紹介を受け、その企業のご担当者さまを通じて、御社をご紹介いただきました。その他にも、さまざまな関係者の方からのご紹介を通じて計8社から見積りをいただき、比較検討を行いました。
その結果、learningBOXは予算面で条件が合致し、ご提案内容にも具体性があったことから、導入をお願いすることに決定しました。
予算面で決め手となったのは、初期投資を抑えられること、教材の追加・更新を自社で行えることです。教材完成後の販売段階では、利用実績に応じた手数料を支払う仕組みが、当法人の運用スタイルに適していると考えました。
learningBOXのホームページでは、どのような情報を参考にされましたか。
秋山様:クラウド化に関する計画から完成までの流れについてです。また、御社の本社が兵庫県たつの市にあり、当法人(京都市)からも近いことから「対面で相談しやすい」と感じた点もポイントの1つです。
手話通訳者の養成から検定試験まで「手話の拠点」としての歩み
全国手話研修センター設立の経緯についてお伺いできますでしょうか。
秋山様:1998年、厚生省(現・厚生労働省)は「手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム等について」(平成10年7月24日 障企第63号)を通知し、手話奉仕員養成事業と手話通訳者養成事業のカリキュラムをはじめて体系的に整理しました。
これを受けて、「一般財団法人全日本ろうあ連盟」が手話通訳者養成事業を積極的に推進するため、同年に「手話通訳養成研修所準備委員会」を設立したのが始まりです。
そこから法人設立までは、どのような流れだったのでしょうか。
秋山様:翌1999年には、ろうあ連盟が「全国手話通訳問題研究会」「日本手話通訳士協会」と連携し、「手話研修所(仮称)基本構想」を策定しました。さらに2000年の社会福祉法改正により、手話通訳事業が第二種社会福祉事業として法制化されたことを受け、3団体で社会福祉法人の設立に向けて取り組みを本格化させました。
2001年10月4日には、法人設立に先立ち「手話通訳者全国統一試験」がスタートし、登録手話通訳者として手話通訳者派遣事業の担い手となる仕組みが全国的に整えられました。そして2002年1月31日付で厚生労働大臣より設立の認可を受けました。
参考資料:
■厚生労働省,「手話奉仕員及び手話通訳者の養成カリキュラム等について」
■厚生労働省,「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律の概要」

現在の具体的な事業内容について教えてください。
秋山様:主に3つの事業を展開しています。まず、手話通訳事業として、人材の養成(研修会)、手話通訳者全国統一試験、手話の研究を行っています。次に、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業及び特定相談支援事業を行っています。最後に、公益事業として、全国手話検定試験、手話の普及、海外留学に係る奨学金事業、亀岡市生活相談支援センターなどに取り組んでいます。
分からないことは都度相談し、大きなつまずきなく運用開始
learningBOX導入から運用開始までは、スムーズに進みましたでしょうか。
秋山様:分からないことはその都度質問していたので、大きなつまずきは感じませんでした。
コンテンツ販売・決済のできる「EC」オプションもご利用されていますね。
秋山様:担当する職員が2名〜3名に対し、年間およそ2万人の方が利用される教材であることから、人の手による入金確認等では対応しきれないことが明らかだったからです。
なお、現在は「EC」オプションに加えて、セキュリティ強化や利用規模の拡大を踏まえ「エンタープライズ」オプションも利用しています。
複数職員がすぐに情報共有できる、クラウドならではの利点
learningBOXを使ってみて、便利だと思う点について教えてください。
竹井様:年間およそ2万人の方が利用されるので、お問い合わせ内容もさまざまです。例えば、販売管理画面でステータスを変更した際などは「メモ」に履歴を残すようにしています(販売管理)。複数職員間で、すぐにお客さまの情報管理や対応方法について共有できるところが、クラウドならではの利点だと思います。
サポートの対応はいかがでしょうか。
竹井様:いつも丁寧にサポートいただいています。メールの質問に対して、画像やリンクを付けてくださるので理解が深まります。
こんな機能があったら良いなと思う点や、改善要望はありますか?
秋山様:AIチャットなどでお客さま自身が操作で分からないことを尋ねられる機能や、重複購入(誤り)を回避できる機能があると良いと思います。
貴重なご意見ありがとうございます。ぜひ社内で検討させていただきます。
スマホ学習を前提に設計。390コンテンツの手話動画視聴システム
learningBOXを活用して展開されているサービスについて教えてください。
竹井様:「手話動画視聴システム」という手話の映像教材です。受講者さま用として1コースで、この中には「手話奉仕員養成講座」の入門課程と基礎課程があり、第1講座から第40講座までを学ぶことができます。コンテンツの数は390です。
また、クイズを活用して講座ごとに習熟度を測るための「ホームワーク」というコンテンツを作成しています。手話は動きが伴う言語ですので、コンテンツは動画が大半です。
実際に受講される方は、どのような方が多いのでしょうか。
竹井様:全国の市町村で実施される「手話奉仕員養成講座」の受講者の方がほとんどです。この講座は受講条件に「高校生以上」と記載している地域もあるため、若年層の方は少ない傾向にあります。お問い合わせ対応をする限り、中高年層の受講者の方が多い印象です。

コンテンツ制作のこだわりポイントを教えてください。
竹井様:スマートフォンで学習できることを重点に設計したので、視聴時間が比較的短いところなどでしょうか。また、手話のみ、手話+日本語など、受講者さまご自身で学習環境を選択できるように、コンテンツを増やしているところもポイントとなっています。
制作はテキスト開発と同時進行で内製し、担当は2名程度、システムの管理は3名で行っています。
手話学習において、eラーニングのメリットはどのようなところにありますか?
竹井様:やはり受講者さまご自身のペースで学習を進められるところだと思います。実際に受講者さまからも、「いつでもどこでも学習できるから便利」「予習復習に役立てている」「再生速度を変えることができるところがよい」など、さまざまなお声が寄せられています。
入金確認業務は想定の10%未満に。何よりの成果は教材の質向上
learningBOXを導入して一番良かったと感じる点は何でしょうか。
竹井様:受講者さまが継続して学習してくださっていることでしょうか。「この教材、すごくいいです。手話の学習がんばります!」とメールやお電話で感想を寄せていただけると、導入して良かったと感じます。
受講者の方や講師の方々には、どのような変化がありましたか。
竹井様:ICTが苦手な受講者さまはまだ一定数いらっしゃるので、受講者さまが環境を整えるまでのフォローは必須となっています。
一方で、この教材を使って指導している講師の方々からは、「指導効果が向上した」という声をいただいています。私どもとしましては、現在3年目を迎えるこの教材を大切に育てていくことで、幅広い世代の受講者さまに活用いただけるのではと感じています。
「EC」オプションの導入により、事務作業はどれくらい削減されましたか?
秋山様:これまで同一条件で同一教材の販売をしていなかったので比較はできませんが、職員2名で年間2万人の入金確認をしなければならなかったことを考えると、想定される処理の10%未満に抑えられています。ただし、ICTを苦手とする方からのお問い合わせに時間を要している面には課題を感じています。
そのほか、learningBOXを導入したことでどのような効果を実感されていますか?
秋山様:導入にあたってサーバー管理などの年間コストは大きくなっています。しかしながら、手話教材の視聴環境の向上に大きく寄与したことは間違いありません。これからの時代を見据えた教材開発ができたことが、非常に有益であると考えています。
手話施策推進法の成立を追い風に、「手話の拠点」として事業の充実を
今後の展望についてお聞かせください。
秋山様:「手話に関する施策の推進に関する法律」(手話施策推進法)が令和7年6月18日に全会一致で成立し、同月25日に公布、施行されましたことを受け、国や地方公共団体は手話の習得に向けての取り組みを積極的に進めています。
また、ニュースやテレビドラマ、映画などで手話を目にする機会が増え、国内外において手話への関心が高まっています。私たち全国手話研修センターは、今後も「手話の拠点」として手話奉仕員養成講座を中心に、事業の充実を図ってまいります。
参考資料:
■ 内閣府,「手話に関する施策の推進」
まずは相談することから始めてみては
最後に、導入を迷っている方へメッセージをいただけますか。
秋山様:私たちはlearningBOXを導入することで、これまでの教材開発の悩みを解消することができました。導入を悩んでいる皆さまも、相談することから始めてはいかがでしょうか。想いを真摯(しんし)に受け止め、より良いご提案をしてくださるはずです。
インタビューにお応えいただき、ありがとうございました!
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