地方にICT施工改革を~eラーニング戦略で未来を拓くサイテックジャパンの挑戦~
建設現場のICT化を支えるi-Construction関連商品・ソリューションの販売・サポートを行う「サイテックジャパン株式会社」。同社は2022年よりlearningBOXを導入し、製品やソフトウェアの認知拡大と、商品知識習得のために活用しています。販売代理店や建機販売会社、レンタル会社等への研修や資格試験の運用に加え、今後はエンドユーザー向けの研修も展開予定です。同社は、learningBOXを通じて、地方におけるICT普及を強力に後押ししています。今回は社内外の研修やサポート、認知拡大施策の中核を担うご担当者の皆さまに、導入の背景・活用法・今後の展望等を伺いました。
i-Construction(アイ・コンストラクション)とは
国土交通省が推進する、建設現場でICT(情報通信技術)を全面的に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図る取り組みのこと。i-Constructionの3つの主要な施策として、ICTの全面的な活用(ICT土工)、規格の標準化(コンクリート工)、施工時期の標準化が定められています。
参考:
■国土交通省,「i-Construction」
- 出張型研修・試験(2名×2泊3日×年6回~8回)の実施に伴う負担が大きかった
- 研修で全国を巡るには限界があり、eラーニングへの切り替えを模索していた
- オンラインフォームでの試験を試したが、トラブルが相次ぎ円滑に実施できなかった
- ICTという新しい分野をより多くの方に知ってもらため、裾野を広げたかった
- learningBOXを導入して研修・試験をeラーニング化し、全国の取り引き先に展開できるようになり、年間約180万~240万円の出張費削減を実現した
- 試験運営もlearningBOX内で完結。採点も自動化でき、円滑に運営できている
- 地方施工業者に研修を届けることで、ICT施工の普及促進の足がかりとなっている
- フリープランで機能と操作性を確認して、使い勝手が良かった
- PowerPointなどで教材作成ができるため、すぐに内製化できると感じた
- アカウント数に応じた従量課金制で、コスト構造が自社の事業モデルに合致した
- 大きな投資をしなくても、まずは小さく始められるので決断しやすかった
関係先が全国に点在するからこそ、eラーニングが必要だった
まずは、御社の事業内容とご担当者さまの業務内容について教えてください。
石渡様:弊社は、i-Construction関連商品・ソリューションの販売・サポート全般を行っています。具体的には、ICT建設機械や測量器、ソフトウェアやクラウドサービスの販売・サポートを、販売代理店や関係各社の皆さまと協力して展開しています。
東条様:私は、石渡と同じくサポートセンターに所属しており、主に販売代理店や建機販売会社、レンタル会社といった取り引き先の皆さまをサポートしています。新しい分野だからこそ「どう使えばいいのか分からない」という声をいただくことも多いので、現場に正しい知識が届くよう、日々支援しています。
増永様:私はパートナーセールスチームに所属していて、施工現場で実際に機械を使うエンドユーザーの方々にも直接関わる役割を担っています。私自身が施工現場を経験してきたこともあり、現場の方々と同じ目線で会話できるのが強みです。施工者の皆さまに「どうすればもっと便利に使えるか」をお伝えし、活用を広げていくことが私のミッションです。
eラーニングシステムの導入が必要となった背景、導入前の課題についてお聞かせください
石渡様:通常の建設機械を、ICT建設機械として使うには「Earthworks(EW)」(※1)というキットを建機に取り付ける必要があります。そのため、販売代理店だけでなく、建機販売会社やレンタル会社の皆さまにも「EW」を知ってもらうことが欠かせません。
全国に関係先が点在しているので、教育を効率的に広げるためにはeラーニングが必要でした。
以前は、1件1件現地に赴いての研修が中心でした。建設業のお客さまは、デジタルに親しみがない方も多く「教育は対面で」という慣習があったのですが、研修で全国を巡るには物理的に限界があり、「どうeラーニングに切り替えていくか」が大きな課題でしたね。

※1 Earthworks(EW)とは、建設機械にGNSSアンテナやセンサーを取り付け、ICT建設機械として活用するための米Trimble社(同社の親会社)のシステム。(参考:「EARTHWORKS | サイテックジャパン株式会社」)
eラーニングの認知拡大や技術理解の促進といった面では、どのような点で難しさを感じますか?
石渡様:建機販売会社やレンタル会社の皆さまに向けてlearningBOXを活用した研修を展開していますが、扱っていただくICT機器は、取扱い製品に付随するプラスアルファの要素なんです。
ですので、取扱いメーカーの商品知識に加えて、ICT機器に関する知識を追加で学んでもらう必要があります。新しい分野であるがゆえに、習得すれば大きなメリットがありますから、積極的に学んでくださる方も多い一方で、「会社に言われたからやっているが、自分の業務とは少し距離がある」と感じる方もいます。
立ち上げ当初は受講者が多いものの、その後は減少しやすいため、継続受講を促すために、日々の営業活動と連携したフォローが重要となってきます。
導入の決め手は「使いやすさ」と「導入リスクの低さ」
learningBOXを最初にお知りになったきっかけについてお聞かせください。
石渡様:インターネットでいろいろ調べて、3社〜4社ほど候補をピックアップしました。その中でデモアカウントを試しながら比較検討を進めました。
learningBOXのどのような点が特に魅力だと感じられましたか?
石渡様:一番大きかったのは使いやすさですね。教材の作成にPowerPointなど身近なツールを使えるので、立ち上げ初期からでもすぐに内製化できると感じました。「まずは自分たちで作って展開してみよう」とスタートしやすかったです。
アカウントごとの従量課金制で、利用状況に応じてコストを見える化できるのも良いと思いました。アカウント数が増えても上限が想定できるので、経営層にも説明しやすかったですね。
ありがとうございます。最終的な決め手となったポイントについて教えていただけますか?
石渡様:導入リスクの低さです。「本当に現場に浸透するのか」という不安はありましたが、learningBOXは小さく始めて、利用が広がれば柔軟に拡張できる。その点で安心感がありました。コストや使いやすさ、柔軟な料金体系など、総合的にバランスが取れていたのが最終的な決め手でした。
導入から短期間でスピーディに運用実現
learningBOX導入から運用開始まではスムーズに進みましたでしょうか?
石渡様:learningBOX自体の導入には特に問題はありませんでした。ただ、取り扱い製品に関する教育コンテンツがほぼゼロからのスタートで、一から作っていく必要がありました。その部分が一番大変でしたね。
なるほど。実際にコンテンツを作成する際は、どのような資料をベースにされたのでしょうか?
石渡様:ベースになったのはマニュアルをPDF化した資料です。親会社である、米Trimble社から提供された、英語のマニュアルを和訳したものもあれば、社内で独自に作成した資料もありました。
新しい使い方を説明する中で、お客さまからご質問をいただき、そのたびに修正や追加をしてアップデートしていきました。まさに手作りベースで形にしていった、という感覚です。
その後、実際に研修がスタートしたのはいつ頃だったのでしょうか?
石渡様:建設業界では、毎年春に「CSPI-EXPO」という大きな展示会があるのですが、そこで2023年5月頃にプレオープンという形で公開しました。導入は2022年の12月末でしたので、短期間でなんとか形にしました。
注目分野の研修として、600アカウントが稼働中
実際のlearningBOXの活用・運用方法について教えてください。
石渡様:現在は、learningBOXで「高度エンジニアコース」と「ICTテクニカルサポーター認定制度」を展開しています。「高度エンジニアコース」は、販売代理店や建機販売会社、レンタル会社のICT担当者の皆さまにご利用していただいており、現在は600アカウントほど稼働しています。専用の研修があまり展開されていない分野のため、広く使っていただいているのが特徴です。
また、弊社独自の資格制度として設けている「ICTテクニカルサポーター試験」でもlearningBOXをフル活用しています。
コンテンツはどのように作成・更新されているのでしょうか?
石渡様:新しい製品やアップデートに合わせて都度追加しています。現在のコンテンツ数は70ほどになっています。
「ICTテクニカルサポーター試験」の合格者数はどのくらいいらっしゃいますか?

石渡様:これまでで延べ300名〜400名ほどです。合格者の方にはプラスチック製の認定カードとジャンパーをお渡ししています。さらに、専用回線を通じてサポートセンターに直接技術的な問い合わせができる特典もあります。
ジャンパーを現場で着ていただくと「あの人はサイテックの認定サポーターだ」と一目で分かるので、PRツールとしても有効だと思っています。
「高度エンジニアコース」は社内研修としてもご活用いただいていると伺いました。
石渡様:そうですね。社内でもこの分野の経験を持っている人材はほとんどいませんので、新しく入社した社員には、エンジニアコースを一通り受講してもらっています。まずは、取り引き先の方々と同じ理解度を持つこと、がスタートラインだと考えています。
使いやすさを実感、サポート対応にも満足
learningBOXを使ってみて、使いやすい点や便利だと思う点について教えてください。
石渡様:コンテンツの作成が、比較的簡単にできる点です。PowerPointなど身近なツールを使えるので研修が立ち上げやすいですね。
東条様:模擬試験や確認テストなどとして、学習の理解度を確認できる仕組みが充実しているのも便利だと感じています。PDFを読むだけだと、どうしても飽きてしまうのですが、テストを組み合わせることで知識が定着しやすくなります。学習のメリハリがつくので受講者にも好評です。
なるほど。貴重なご意見、ありがとうございます。learningBOXの営業やサポートの対応についてはいかがでしょうか。
石渡様:メールでの問い合わせもすぐに返信いただけるので、安心感があります。困ったときにすぐ相談できるのは大きいですね。
出張費を削減し、地方のICT普及を加速
learningBOX導入で、どのような効果が得られていますか?
石渡様:一番分かりやすいのは出張費用の削減です。これまでは「ICTテクニカルサポーター試験」の実施にあたって、2名体制で現地に赴き、2泊3日のスケジュールで研修と試験を行っていました。Googleフォームも取り入れてみましたが、セキュリティの関係で回答が送れず、Excelでやり取りせざるを得ない、といったトラブルが多かったんです。
出張には1回あたり30万円程度のコストがかかり、年6回~8回で、180万~240万円の出費でした。learningBOXを導入してからは、オンラインで完結できるようになり、コスト削減できました。
試験運営もlearningBOX内で完結し、採点も自動化できているので非常にスムーズです。
ただ、それ以上に大きいのは「裾野の広がり」です。現在では数百名規模の方々に試験を受けていただいていますが、正直、従来のやり方ではここまで拡大することは不可能でした。
単なる経費削減ではなく、ICTという新しい分野をより多くの方に知ってもらい、実際に使っていただくきっかけを作れたことこそが、大きな効果だと思っています。
施工者向け研修を展開し、ICT施工をスタンダードへ
今後のlearningBOXの活用予定についてお聞かせください。
石渡様:施工者さま向けのシステムを展開することで、ICT施工がこれからのスタンダードになるよう積極的に後押ししていきたいです。
増永様:最近は施工者の方々からも「自分たちも学べるコンテンツが欲しい」という声が増えてきており、新たな研修を準備しているところです。
i-Constructionの普及において、learningBOXはどのような役割を果たしていくとお考えですか?
石渡様:私たちが特に大切にしているのは、全国の地域に根ざした施工業者さまです。自社で教育や研修を展開したい、ICTを学びたいと考えていても、なかなかそこまで手が回らないのが現状です。だからこそ、私たちがlearningBOXを活用して、コンテンツを提供することに大きな意味があります。
このような仕組みを整えること自体が、地方におけるICT施工の普及において大きな一助になると考えています。これは弊社の使命でもありますし、learningBOXが果たしている重要な役割だと思います。
「まずはやってみる」で始められるlearningBOX
learningBOXの導入を検討中の方にメッセージをいただけますか?
石渡様:コストや使い勝手の面で、ハードルはかなり低いと思います。私たちも導入当初は「本当に活用してもらえるのか」という不安がありましたが、結果的には幅広い関係先で展開できています。
大きな投資をしなくても、まずは小さく始められる。そういう意味では、導入を検討されている方にとって、安心感のある仕組みだと思います。
インタビューにお応えいただき、ありがとうございました!


