医療系大学でのLMS活用で留年・退学率減、国家試験合格率は上昇傾向に
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- 国家試験等の合格率向上のため、学生の学力の底上げをしたい
- 習熟度に応じた学修支援によって、伸びる学生をいっそう伸ばすとともに、留年や休・退学を減らしたい
- 学習意欲を高め、いつでもどこでも取り組めるeラーニングコンテンツにしたい
- 臨床工学科で国家試験対策にlearningBOXを活用することで、2022年度「臨床工学技士」試験に受験者全員が合格(新卒)することができた
- 習熟度が遅れそうな学生を事前に把握してフォロー。留年や休・退学率も減少傾向に
- learningBOXの浸透で、導入時から継続的にeラーニングに取り組んでいる
2020年にlearningBOXを全学的に導入し、授業や試験対策等で活用している鈴鹿医療科学大学。2023年より、新たな学科も加わり4学部11学科15専攻分野を有する「医療・福祉の総合大学」となりました。前回は導入後間もない段階でのインタビューでしたが、本格運用から3年が経ち、実際にlearningBOXをどのように活用しているのか、実感している導入の効果、今後の展望などについて改めて伺いました。今回は導入当初よりlearningBOXを積極的に活用している医用工学部 臨床工学科、保健衛生学部 放射線技術科学科の教員の方々にお集まりいただきました。
鈴鹿医療科学大学とlearningBOX株式会社は、2022年11月に産学連携協力に関する覚書を締結。次世代を担う医療と福祉のスペシャリストの養成及びeラーニングシステムを活用した大学の教育、研究機能の向上を図ることを目的にさまざまな取り組みを実施しています。2023年には両者の共同研究の成果が認められ、国際的に名誉のあるIMS Japan賞「優秀賞」を受賞しています。
【関連リリース】
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【調査レポート】
医療系大学におけるLMS活用法とその効果について
学習管理が容易になったことで、各学生のフォローがしやすくなった
learningBOX運用開始から3年ほど経ちますが、どのようなメリットを感じておられますか?
三浦様:learningBOXを導入したことで、一番良かったと思っているのは、きちんとLMS(学習管理システム)として機能しているという点です。勉強していない学生をすぐに発見できるようになりました。
課題や試験範囲に指定しているコンテンツの学習状況を見れば、一目で取り組んでいないことが分かります。習熟度が遅れそうな可能性のある学生を見つけ、すぐにフォローできるようになりました。
松浦様:放射線技術科学科では、各期ごとに最低年2回は個別面談を実施していますが、定期試験の再試験を受けることになった学生には、追加で面談を実施しています。加えて、learningBOXの課題を放置している学生にも、面談を実施するようにしました。学習状況が一目瞭然なので、学生も言い逃れようがないという感じですね。
個別にフォローできるようになったことで何が変わりましたか?
三浦様:徐々にですが、留年率が下がってきていますね。これまでは、成績が伴わずに留年すると、そのまま諦めて退学してしまうというパターンが多かったのですが、留年率が下がることより、退学率も下げることができますよね。
武藤様:留年や休・退学率も減少傾向になってきていることはとても大きいですよね。私は、個人の習熟度に合わせた学習ができるようになったと感じています。
例えば、全員必須のコンテンツに加えて、連動型コンテンツ設定を活用して点数の足りなかった学生には追加でコンテンツを勉強してもらいます。出題方法を変えてみたり、動画を足してみたりして個別にアプローチをしています。learningBOXを解かないと定期試験に合格できないので、学生も一生懸命に取り組んでくれます。
learningBOXの導入により、勉強方法自体にも変化があったということでしょうか?
松浦様:そうですね。医療系は学習範囲も広いですし、取り扱いデータの観点からも、教科書自体がデジタル化するというのはまだまだ先の話かなと思っています。ですので授業自体は紙ベースですが、放射線技術科学科では、learningBOXは予習や復習など要点を伝えるための副教材としての使用がメインです。
learningBOX導入前はとにかく授業ノートを作って提出してもらっていました。授業後に作ってもらうことで、半強制的に復習してもらうということが目的です。導入後もノート提出は継続していますが、learningBOXにコンテンツを追加することで強制的に復習を続けてもらったり、予習動画をアップロードして見てもらったりするなど、さまざまな方法を試しています。
必須のコンテンツに加えて、授業の動画を15分くらいのダイジェストにしてアップロードして、いつでも確認できるようにもしています。
三浦様:learningBOXにコンテンツを置いておくと、学生がこれをやれば定期試験に合格できるということが分かり、しっかりと学習してくるようになりましたね。勉強しなかったら合格できないので、コンテンツを置いておけば自主的に取り組んでくれています。
learningBOX導入前と比べて、学習時間は確実に増えていますね。ただ問題の量が多いと、解き終わらないという声も出てくるので、その辺りは調整が必要ですね。
learningBOXが学生にも浸透してきているということですね。
松浦様:教科書ベースだけだったときは、勉強の仕方が分からない、勉強しているのに点数につながらないということもありましたが、learningBOXを導入してからは「どこを勉強すればいいですか?」という質問はほとんどなくなりました。コツコツ自分で勉強しようとしている学生には特に役立っていると思います。
まだlearningBOXを導入していない科目でも「ぜひlearningBOXを導入してください」という声が学生から寄せられるほどになっています。
三浦様:「過去問題ないですか?」「何を勉強すればいいですか?」という質問には、learningBOX上の問題集を送って対応しています。とても便利になりました。
教員にも着実にlearningBOXが浸透してきている
learningBOXは教員の方々にもずいぶん浸透してきているようですね。
武藤様:放射線技術科学科では教員が15名おり、現在13名が使っています。活用方法は、小テストのみ、資料配布のみ、コンテンツ作成・配布など教員によってさまざまですね。
三浦様:臨床工学科では、教員は13名で、10名が活用しています。また本学内で、独⾃で「LMS研究会」を結成しています。教員⾃⾝が講師を務め、教え合い、刺激し合い、助け合う体制を整えています。2023年までに計17回のLMS研究会を開催しました。テーマとしてはLMSの基本的な使い⽅、LMSを活⽤した授業⽅法の事例、他施設でのLMSの活⽤状況などです。
learningBOX本社でも、LMS研究会を一緒に開催しましたね!
三浦様:システム開発の方々と直接話ができたのがとても良かったです!それからLMS研究会主催で、今後learningBOXを活用していきたい教員向けに「learningBOX勉強会」というものを開催しました。少人数制で個別の質問に答える形で勉強会を進めました。今後も多くの教員にlearningBOXを活用していただけるように活動していきたいと思います。
learningBOXを活用していて、感じている課題などはありますでしょうか?
松浦様:学生にlearningBOXが浸透しているのは良いのですが「learningBOXの範囲だけを学習すればいいんでしょ」という考えの学生が一定数出てきていて、その対策を考えているところです。
当初は、教材をコース化して段階的に難易度を上げていき、最終的にテストを全問正解するまで学習するという手法で、学生全体の学力の底上げにつながったのですが。コンテンツ数を増やしたり、もっと問題の深いところまで追及するような内容にしたり、問題形式を工夫したりするなど、さまざまな方法を考えています。
三浦様:LMS研究会に参加した教員からは、問題の量が多いと学生も大変なので、問題形式を工夫するパターンが効果的だったという声も出ていました。いかにコンテンツを充実させていくかという部分が現段階での大きな課題となっていますね。
learningBOXでは2023年秋に、教材の自動生成などを組み込んだChatGPT連携機能「AIアシスト」をリリースしており、そちらもぜひご活用いただければと思います。
国家試験対策にlearningBOXを活用し、合格率も上昇傾向に
国家試験対策は、いつの時期から実施されているのでしょうか?
三浦様:臨床工学科では4年生になってからですね。前期には病院で6週間の実習がありますが、その合間や後期で対策を実施します。
武藤様:放射線技術科学科でも本格的に対策を始めるのは4年生からですが、1年生の専門科目のときから国家試験の出題範囲を意識させるような授業内容にしています。国家試験対策の模擬試験は3年次から取り組むようにしています。
実習は4年生の前期で12週ありますが、2024年度からは3年生の後期・4年生の前期に実習となり、カリキュラムが変わります。実習時以外はずっと国家試験対策ですね。過去問題を解いたり、マニュアルを理解したり、補講的な授業を受けたりする期間となります。
国家試験を受験するまでにも、複数の試験をパスする必要があると伺いました。
三浦様:臨床工学科では、毎年3月にある国家試験の前に「全国統一模擬試験」(12月~1月実施)があります。この模擬試験で一定の成績を残さないと国家試験の受験が認められず、留年ということになります。learningBOXを活用し始めてからは、4年次で留年する割合が下がってきていますね。
また各学年で、進級に必要な専門科目などの授業単位数が決められており、定期試験に合格しないと進級できないことになっています。定期試験は期ごとにあり、加えて中間テストなども合わせると年4回試験を実施しています。
松浦様:放射線技術科学科では、4年次に「診療放射線学総合演習」という科目の定期試験を12月末に実施しており、これが毎年2月実施の国家試験に向けた最終試験という扱いになっています。これで不合格になると4年次で留年となりますが、やはりlearningBOX導入後留年する人数は減ってきています。
実際の国家試験合格率を教えていただけますでしょうか?
松浦様:合格率については上記の表をご確認いただければと思います。放射線技術科学科では2018年に武藤先生がlearningBOXを使い始められてから、2019年からいくつかの授業で導入し始めました。2020年から本格導入ということになります。
放射線技術科学科では、まだ国家試験対策としてlearningBOXを活用しきれていない段階ですので、国家試験の合格率に直接反映されてはいないと思います。ですが、成績が下位の学生に対して、複数の問題を追加したり、後期になると授業がないため、朝きちんと起きて勉強をするために、朝一の時間帯に限定して問題を解いてもらったりという取り組みは行っています。
三浦様:臨床工学科では、2021年からlearningBOXを本格導入しましたので、2021年度、2022年度の国家試験の結果に、効果が反映されており、上昇傾向が見られています。もっとも効果があると思う教材は、やはり国家試験、定期試験、模擬試験の問題集や解説集ですね。過去のものを一覧で見られるようにし、教材へのアクセス性を上げたり、learningBOXのPDF機能でハイライトやメモがあるので、それを活用してもらったりしています。
少子化もあり、入学してくる学生の学力は落ちてきています。このような合格率を維持していくためには、さらなる工夫が必要だと感じています。
今後の国家試験対策として、どのようなことを実施予定でしょうか?
松浦様:放射線技術科学科では国家試験の過去問題をデータベース化し、そこに解説も加えたいと思います。また動画コンテンツを勉強するときに、どうしても表面上だけで覚える学生がいるので、その真理まできちんと理解できるようなコンテンツを充実させていきたいですね。
あとは、10分ほどの動画をたくさんアップロードして活用している科目があるのですが、それを他の科目でも実施していきたいと思っています。
武藤様:放射線技術科学科では毎月1回模擬試験を実施しています。その結果を見て、learningBOXに立ち返り学習するということができたらなとも思っています。また先ほどご紹介いただいたように、AI機能も上手に活用していきたいです。
それと「第1種放射線取扱主任者」の国家試験も学科としては推奨しているのですが、こちらの合格者の数も増やしたいと考えています。まだまだこれからですが、こちらの試験対策でもlearningBOXを活用したいですね。
三浦様:臨床工学科では、紙媒体で模擬試験を実施しています。ただ、紙だけでは解説を自分で把握するという作業が不足しがちになるため、その部分をlearningBOXで補いたいです。どこが間違っているかをきちんと自分で理解することが非常に重要です。
当初は、国家試験と同じようにlearningBOXでも択一問題を多く作成していましたが、最近では記述式の問題を多く出すようにしています。記述式となると、学生は事前に解答例を準備するために勉強します。その作業の繰り返しにより、試験結果の点数も上昇してきているのではないかと感じています。臨床工学科では定期試験でもlearningBOXを使用していますが、一回出題した問題を一定期間経ってから、再度解答してもらおうとも考えています。
さらに、放射線技術科学科と同じようにlearningBOX上で国家試験の過去問題をデータベース化し、解説も入れる予定です。ポイントは1問解くごとに解説を見せて、どこが間違っているのかを確かめられるようにするということです。全部問題を解いてからではなく、1問ごとに確認するというところが重要です。
またlearningBOXさんにもいろいろとご相談させていただければと思います。
はい。効果的な教材作成に関する情報共有や機能改善の相互提案などを行いながら、さらなる個別最適な学びや国家試験の合格率向上を目指した取り組みを行っていければと思っております。
インタビューにお応えいただき、
ありがとうございました!