年間5,000枚以上の紙を削減、模擬試験平均点は上昇傾向|導入5年で見えてきた成果
「北陸食育フードカレッジ」「北陸福祉保育専門学院」の2校と、附属保育施設3園を運営する北陸学園。同校では、コロナ禍を機に教育体制の強化と学習環境のデジタル化を進めるべく、learningBOXを導入しました。前回の取材(2022年)では、ペーパーレス化をはじめとする基盤整備に大きな効果が見られました。あれから3年が経過した現在、改めてお話を伺いました。learningBOXの活用はさらに広がり、新たな成果も生まれているといいます。ご担当者の方々に、進化した活用方法と具体的な効果について語っていただきました。
- 国家試験合格を目指す上で、学生の習熟度の差が大きく、効果的な試験対策の方法を確立することが課題となっている
- 入試方法や履修内容の違いから、入学してくる学生の学力が多様化している
- 学生への個別電話催促や、印刷物準備等の対応に時間がかかり、負担が大きかった
- 学習データを可視化し、個別フォローを強化できた。長期休暇中の演習課題や、特定科目に絞った重点対策で、模擬試験の平均点が上昇傾向に
- 理系科目が苦手な入学内定者向け学習を継続。入学後の専門科目の理解度向上に直結
- 教材やお知らせのデジタル化で、年間約5,000枚の紙を削減。教職員の業務が効率化し、休暇中課題や試験対策など新たな取り組みを始め、学びの質が向上している
- learningBOX担当者との商談を重ねるうちに、課題解決への“関心”が“確信”に変化した
- コロナ禍でもストレスなく、好奇心を持って学べる設計
- 問題の正誤だけでなく、回答時間も可視化でき、学習プロセスを分析できる
- 取り組み時間を見える化できるので、学生への対応の指標にできそうだと考えた
(2022公開の記事より)
▼2022年公開 第一弾 導入事例はこちら
授業・行事・資料共有まで。5年間で広がった活用の幅
learningBOX運用開始から5年ほど経ちますが、現在のlearningBOXの活用方法についてお聞かせください。
千谷様:活用のメインは国家試験対策です。常勤教員と教務課職員は100%活用しており、非常勤講師は約40%が利用しています。特に国家試験対策に関わる非常勤講師が中心です。
実習系の科目では、自宅で練習ができるように講師が撮影した動画をlearningBOXに掲載し、学生はその動画を見ながら自宅で反復練習を行っています。
“国家試験に特化”という点では、管理栄養士学科、製菓・製パン専攻学科、フードマイスター学科など、国家資格取得を目指す学科が主な対象です。

3年前の取材から、learningBOXの活用方法にどのような変化がありましたか?
千谷様:この3年間で、learningBOXの活用は大きく広がりました。
その一つとして、授業で行っている小テストをlearningBOXに掲載して、学生が自主的に何度でも取り組めるようにしています。年度をまたいでも、そのままテストは使えますし、改訂があった場合もすぐに差し替えができます。
授業で使用しているスライド資料もlearningBOXに載せているので、学生は授業後や自宅でも復習できます。
また、学校行事やクラスの連絡事項もすべてlearningBOXで配信していて、当日の動きを動画で説明することもあります。行事の流れを事前に共有できるようになったのは、とても便利ですね。
learningBOXの運用や教材登録は、どなたが担当されていますか。
千谷様:learningBOXの教材作成やアップロードは、国家試験対策を担当する専任職員が一括して担当しています。小テストの問題などは講師から受け取り、それを元にアップロードする形で連携しています。
また、learningBOXの管理画面から学生の取り組み状況を随時確認できるため、その情報を講師と共有し、指導に反映しています。
夏休みの新たな取り組みで学びの質が向上
2025年の夏休みには新しい取り組みも実施されたそうですね。
斎木様:はい。自主学習課題として過去の国家試験問題を分野別に分類・加工し、learningBOX上に展開しました。
100問以上ある問題の中から、ランダムで20問を出題し、正答率80%を超えるまで繰り返すという条件を設定しています。習熟度が遅れがちな学生は何度も挑戦が必要になります。
さらに、追加で週に1回のペースでテストを実施し、取り組み回数などのプロセスや達成度を評価しました。
千谷様:紙の課題だと「提出すること」が目的になっていましたが、learningBOXでは正答率を基準にゴールを設定できます。その結果、「何のためにやるのか」が明確になり、学習の意味づけが深まったと感じます。
今回の取り組みをどう評価されていますか?
斎木様:手応えはあったと感じています。一部の学生からは「問題数が多い」といった声もありましたが、繰り返し学習に取り組むことで、国家試験合格に必要なハードルを実感してもらえたと考えています。
学生の学習状況を可視化し、個別フォローを強化
learningBOXでは、紙では見えなかった学習進捗が可視化できる点も特徴ですが、学習が遅れがちな学生へのフォローはどのようにされていますか?
斎木様:まずは、学習の“習慣化”ができているかどうかを確認します。さらに個別に面談を行い、教員同士で状況を共有しながらサポートしています。
learningBOXでは「いつ・どのくらいの時間取り組んだか」「何回解いたか」までデータで追えるので、提出物だけでは見えなかった学習のプロセスを把握できるようになりました。より的確なフォローや声かけができるようになったと感じています。
学習のプロセスも評価に反映されているのでしょうか?
斎木様:はい。日々の学習進捗をもとに、学習習慣の形成を評価項目の一つとして加点しています。どの学生がどのペースで進んでいるかを把握できるので、早い段階でフォローできるようになりました。
千谷様:資料も、誰が閲覧したかを把握できるのが便利です。以前は1人ずつ電話で確認していましたが「見ていない学生」に早めに声をかけられるようになりました。learningBOXでは、学習を促す通知等が送れる「メール通知機能」や「メッセージ」が活用できるので便利ですね。
learningBOXで重点的に学習を進めた科目ほど、成果を実感
learningBOXを資格試験対策に活用いただくことで、成績向上につながるような効果はありましたか?
千谷様:国家試験の合格率に、はっきりとした数値としての差が出ているかといわれると、そこは慎重に見ていく必要があると思っています。ただ、教材の種類も増え、過去問題もかなり充実してきましたので、学習環境としては以前より確実に整い、質が高まってきたと感じています。
特に「管理栄養士」国家試験は年々難しくなっていますが(※1)、本校の成績上位層の学生はしっかり点数を取れるようになってきています。そうした得点の伸びは、一つの成果の表れともいえますね。
その一方で、成績下位層の学生については、学習意欲の維持や、確実に課題を進めてもらうために、引き続き継続的なサポートが重要だと考えています。
年々難しくなっている「管理栄養士」の国家試験対策において、過去問題等の整備のほかに取り組まれていることはありますか?
斎木様:「管理栄養士」の国家試験は、午前と午後に日程が分かれているのですが、特に午前の科目は基礎分野が中心になっています。午前の問題が思うように解けないと「どうしよう」と不安になって、そのまま午後に引きずってしまい、メンタルに大きく影響してしまうことがあります。
このようなことから、私たちは午前試験の対象である、基礎分野の5科目を重点的に強化するために、learningBOXを活用しています。
千谷様:最近、learningBOXを活用して一定の成果が表れてきていると感じるのは、国家試験対策の模擬試験です。本校では、年間で約10回の模擬試験を実施していますが、直近の模擬試験では、理系科目において、学校平均が全国2位や3位に入る結果も出ています。
learningBOXで重点的に学習を進めた科目ほど、成果が出ている実感があります。
(※1)参考資料:
■旺文社教育情報センター,「2025年 管理栄養士国家試験結果」
ペーパーレス化で年間5,000枚以上の紙を削減。教員の業務効率化も
前回の取材では「年間1人あたりA4用紙250枚分の削減」という効果がありましたが、今回はさらにペーパーレス化が進んだと伺いました。
千谷様:デジタル化は大きく進みました。授業や教務で配布していた印刷物をすべてオンライン化したことで、年間でおよそ5,000枚以上の紙の削減につながっています。
さらに、これまで紙で掲示していた学生向けのお知らせの約8割をlearningBOXに移行できました。必要な情報を学生がオンラインでいつでも確認できるようになり、掲示物を見落とすといったことも減っています。
斎木様:教員は、放課後に印刷室で毎日2時間ほどかけて印刷物を準備していましたが、今はその作業がほとんど不要になりました。教職員の業務効率化や負担軽減にも大きく貢献しています。
授業でデジタル教材を活用することで、どんなメリットがありますか?
斎木様:これまでは、資料の枚数が多いので白黒印刷でした。そのため、写真や図が分かりにくかったのですが、デジタル化したことでカラーで鮮明な画像を学生に見せられるようになりました。
特に臓器や栄養素の構造など、細かい図を扱う授業では習熟度が高まっていると感じます。スマートフォンやタブレット端末でも鮮明に表示できるので、視覚的にも分かりやすく、学びやすくなったと思います。
そのほかに、効果を実感されてることはありますか?
斎木様:欠席した学生への、教材配布等の個別対応作業を削減できました。以前は欠席者に個別でプリントを用意したり、配布漏れがないかを確認したりといった作業が必要でした。今はlearningBOX上に教材を全てアップロードしておけば、学生が自分のタイミングで閲覧できるようになっています。
さらに、前回の取材で、理系科目に苦手意識を持つ学生が多いため、入学内定者向けにlearningBOXを活用した事前学習を実施していることをご紹介しましたが、この取り組みを現在も継続しています。
その結果、事前学習に取り組んだ学生は入学後の専門科目の学習にスムーズに移行できるようになり、専門科目の学習定着や理解度の向上につながっていると認識しています。
学習管理と学生への情報伝達の両面で、業務効率化を実感
learningBOXを使う中で感じている課題や、今後のご要望などはありますか?
千谷様:紙で実施するテストの成績も、learningBOX上で一元管理できるようになると助かります。紙での模擬試験や小テストの結果も集約できれば、学生自身が「自分の成績推移」や「苦手分野」をより正確に把握できるようになりますよね。学校側としても、データをもとにした指導や個別フォローがしやすくなり、教育の質をさらに高められます。
さらに、今後はAIの活用にも期待しています。過去10年、20年分の国家試験の問題をAIが自動的に分析し、頻出の単語や用語を抽出したり、改変問題を自動生成したりできる仕組みがあれば非常に助かります。それが実現すれば、教員の負担も軽減でき、学生一人ひとりの理解度に応じた学習支援ができるようになると考えています。

貴重なご意見をありがとうございます。検討したいと思います。では、learningBOXの「使いやすい点」や「便利だと感じる点」はどのようなところでしょうか?
千谷様:まず、「誰が閲覧したか」や「未提出の学生」が一目で分かる点ですね(成績管理)。リマインドもしやすいですし、「公開期間」を設定できるので、長期休暇中でも課題を出せます。さらに、「ダイレクトメッセージ」で学生一人ひとりに直接連絡できるのも便利です。
成績管理やメッセージ機能の活用によって、学生の反応や学習姿勢に変化はありましたか?
千谷様:対面で伝えても反応が薄い学生でも、learningBOXから通知メールが届くと、スムーズに対応してくれることが多いです。やはり文字で伝えることで、学生自身も「きちんとしなければ」と感じるようです。
斎木様:一斉にメッセージを送れる「お知らせ管理」も便利で、教員の作業を効率化できますし、学生の反応率も高いです。総合的に、学習管理と学生への情報伝達の両面で、業務効率化につながっていると実感しています。
learningBOXと日常の授業をつなぐ、新たな学習サイクルを構築したい
今後の展望についてお聞かせください。
千谷様:今後は、learningBOXでの学習と日々の授業やテストが相互的に繋がるような学習スタイルを確立したいと考えています。
learningBOXを活用した自宅学習によって基礎学力の定着を図り、その成果を対面授業や学校で実施する小テスト等で確認することで、理解の不十分な領域を早期に把握します。さらに、特定した弱点を再びlearningBOXを用いた自宅学習で強化するという学習の循環を構築したいです。
最終的には、対面での指導(リアルな学び)と、learningBOXでのeラーニング(デジタル学習)の両面を連携させて、学生一人ひとりが自分の目標を確実に達成できる環境を整えていきたいと思います。
インタビューにお応えいただき、ありがとうございました!


