ICT教育導入による生徒・教師・学校それぞれのメリットとは?
現代の教育現場では「探求学習」や「ICT教育」のように、新しい教育の形が推進されています。今回の記事では、ICT教育の導入によるメリット・デメリットについてご紹介します。
ICT教育の導入をお考えの教育担当者の方は、導入によって生徒・教師・学校が得られるメリットをあらかじめ把握することが重要です。本稿を参考にぜひICT教育の理解を深めていきましょう!
ICT教育とは?
ICT教育とは、教育現場で行われるタブレットやPCなどのITテクノロジーを活用した取り組みのことを指します。ICTは「Information and Communication Technology」を略した言葉であり、日本語では「情報通信技術」と呼ばれます。
ICT教育の例としては、タブレットや電子黒板の導入などが身近な例として挙げら、「デジタル機器を使うことで、生徒・教師のそれぞれが視覚的にわかりやすい授業」の実施が可能です。
ICT教育が注目されている理由
ICT教育が注目されている主な理由には、「GIGAスクール構想の推進」が挙げられます。「GIGAスクール構想」とは、小学校・中学校の児童生徒1人ずつに学習用のPCと、ネットワーク環境を整備する計画です。
「1人1台端末」の環境を整備できれば、教師・生徒が双方向の授業を実施できるほか、個々の学習状況に応じた教育の実施も期待できます。学校におけるICTの環境整備状況は、地域によって差が生じています。
また、2018年に実施されたPISA(学習到達度調査)において、日本はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも、学校でのデジタル機器の利用時間が最下位でした。
デジタル機器が活用されていない状態が進むことで、IT分野において日本はさらに遅れを取ることが懸念されています。GIGAスクール構想を実現させるためにも、ICT教育が持つ役割は大きいといえます。
目次に戻るICT教育のメリット
ICT教育には、生徒と教師の双方にとってたくさんのメリットがあります。
こちらでは4つのメリットを例に、解説します。
生徒のメリット1:モチベーションが高まる
生徒の視点におけるICT教育のメリットとして、モチベーションの高まりが挙げられます。ただ黒板に板書された内容をノートに書き写す授業では、生徒のモチベーションを高めることは困難です。
しかし、タブレットやPCを使ったデジタル機器を用いることで、生徒は新鮮な感覚で授業を受けることができます。ひとつの例として、タブレットやPCに備わっているビデオ通話機能を利用し、海外の生徒と話す授業がおすすめです。
英語を中心とした外国語の重要性が叫ばれている現状もあり、タブレットやPCをうまく使えば、生徒にとって刺激が高まる授業が実施できます。
生徒のメリット2:楽しみながら学習できる
ICT教育は、視覚や聴覚で相手に情報を伝えられる点もメリットです。
例えば、数学では図形が立体的に表示されたり、英語では単語の発音を音声で聞き取ることができます。教科書で文字を読むだけの授業では、生徒同士のディスカッションなども生まれにくく、教師の一方的な授業が多くなりがちです。
しかし、ICT教育では教師と生徒、あるいは生徒同士といった双方向の授業が行えます。生徒が楽しみながら学習できる状態を作り出せれば、授業の満足度が高まることにつながります。
教師のメリット1:業務効率化につながる
ICT教育は、教師にとって業務効率化につながるメリットもあります。デジタル機器を使用して授業を実施すれば、教科書を発注したり印刷したりといった手間が発生しません。
また、課題の採点などもオンラインで実施することで、資料の保管や準備も不要となります。学校現場における教師の負担の大きさが叫ばれている現代、ICT教育は負担を減らすきっかけとなる活躍を期待されています。
教師のメリット2:情報共有がしやすくなる
ICT教育を導入するメリットとして、教師同士の情報共有がしやすくなることも挙げられます。資料作成や表計算ができるソフトを使って資料を作成すれば、資料を紙で印刷する必要もなく、簡単に資料の共有が可能です。
また、授業の進捗状況を見える化しておけば、他の教師との連携も取りやすくなります。
ICT教育のデメリット
ICT教育には多くのメリットがある一方、デメリットも少なからず存在します。代表的なデメリットは以下の2つです。
導入の際にコストがかかる
タブレットやPCは安価に購入できるものではなく、一定のコストがかかってしまいます。生徒・教師の全員分のデジタル機器を用意する場合、導入時にまとまった費用が発生することがICT教育のデメリットです。
加えて、デジタル機器は故障してしまうことも珍しくありません。故障したときには修理を依頼するか、新しく買い直す必要があります。導入後のコスト発生も考えなければならず、想定した以上のコストがかかる可能性も考えられます。
トラブルが起こると授業が中断になる
デジタル機器の利用にはインターネット環境が必須であるため、通信環境にトラブルが発生すると、授業を中断しなければなりません。インターネット環境が回復しない場合は、想定した授業を進められないことがデメリットです。
授業の進捗具合に影響が出ないよう、デジタル機器が使えなくなったときの対処法を考えておきましょう。
目次に戻るICT教育を円滑に進めるために必要なこと
ICT教育にはさまざまなメリットがあるものの、活用の仕方が不十分な場合は、効果を実感できないケースも少なくありません。
ICT教育を円滑に進めるためには、以下の2点を確認しておきましょう。
ICT教育を実施する目的を明確にする
ICT教育はあくまで「生徒のため」に実施することが重要です。教師の業務負担につながる側面もあるものの、実施する目的は明確にしておきましょう。
どのようなスキルを身につけてほしいのか、ICT教育を通してどう成長してほしいのか、ICT教育を実施する前に考えておくことが求められます。
外部人材を活用する
ICT教育を進めるときは、外部人材の活用も検討しましょう。ICTスキルのレベルは個人単位で異なるため、デジタル機器が用意されても教師がうまく使いこなせるとは限りません。
現在、文部科学省は「ICT活用教育アドバイザー派遣事業」を実施しています。ICT環境の整備に関する計画策定や、効果的な指導方法をアドバイザーが助言する事業です。
すでにICT教育に精通しているアドバイザーを活用すると、ICT教育を円滑に進めることが期待できます。
ICT教育の実例
ICT教育は多くの学校で実践されており、実例もたくさんあります。ここではICT教育の実例を2つ紹介します。
実例1:立教女学院小学校
東京都にある立教女学院小学校では、「Well Learning Project」と題してICT教育を推進しています。このプロジェクトは下記の3つの考えをベースとしています。
- 子どもたちが心から学びたいと思える学びの場所
- 立教女学院小学校で我が子を学ばせたいと親が実感できる環境
- 教員が心を込めて子どもに教えたいという意欲を持てる場所
野菜の栽培や田植えの体験といった自然に触れる機会が用意されているだけでなく、PCの操作を学ぶことも可能です。
また、学習を通して学んだことを発表する場面ではiPadを用いるなど、デジタル機器を使う場面が頻繁に用意されています。
【出典】 立教女学院小学校「Well Learning Project」
実例2:N中等部
インターネット環境があればどこでも学習できるN中等部では、カリキュラムの中に「プログラミング学習」が用意されています。
プログラミング学習の目的は、ただプログラミングのスキルを身につけることではありません。プログラミング言語の知識を活かしつつ、問題解決能力や論理的思考力を育てることを目的としています。
まずはPCの使い方など、基本的なICTスキルを身につける段階から始まります。その後、自身が作りたいと思うもの(Webサイト・ゲームなど)を選び、自らで作っていく流れです。
【出典】 N中等部「プログラミング学習」
目次に戻るまとめ
今回は、ICT教育のメリットを中心に、ICT教育を円滑に進めるために必要なことや実例なども紹介しました。
ICT教育には生徒・教師のそれぞれにメリットがあり、うまく活用できれば大きな効果を期待できます。
しかし、教師が業務を楽にするために導入するのではなく、生徒にとって効果的になる工夫をしましょう。
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