ICT教育がもたらす5つのメリットとは?デメリットや注目される背景
様々な場所でデジタル化の波が広がっていますが、その影響は教育現場にも徐々に浸透しつつあります。現代の学校教育において、学習効率の向上や教育現場の負担軽減を進めていくためにも、どのようにITを活用していくのかが非常に重要なカギとなっています。
この記事では、ICT教育の基礎知識やICT教育を導入するメリット、課題、導入事例を解説していきます。
「ICT教育の導入方法が分からない」「メリットや課題を詳しく知ってから導入を検討したい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
ICT教育とは
ICTとは、「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略称です。ICT教育とは、教育現場において情報通信技術を活用した取り組みを指しています。具体的には、以下の授業方式が挙げられます。
デジタル教科書やデジタル黒板の利用
タブレット端末を活用したインターネットでの情報収集
動画やアニメーションを使った解説
従来の教育現場では、紙の教科書やアナログ黒板、筆記用具やノートなどが用いられていました。新たにICTを導入することで、教材としての活用方法が広がったり、授業の効率化が進んだりと、さまざまな可能性が期待されています。
まずはICT教育の必要性や、注目されている背景をご紹介します。
ICT教育の必要性・注目されている背景
DXの推進
ICT教育が注目される背景として、社会のDX推進が挙げられます。DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略語です。Transに「交差する」という意味があるため、交差を1文字で表す「X」が用いられています。
DXとは、デジタル技術を活用して製品やサービス・組織・ビジネスモデルを革新することを指します。近年のビジネスシーンでは、数多くの企業でDX推進の取り組みが始まりつつある段階です。組織が抱える課題を解決へと導き、市場で同業他社に対する優位性を得るには、DXの観点が欠かせません。それは教育分野でも同様です。
ICT教育では、高品質なデジタル教材や学習内容の個別最適化により、教育の質の向上が期待されています。このようなICT教育の施策は、DX推進の観点からも有効とされ、日本の教育現場の改革に寄与すると考えられています。
GIGAスクール構想の実現
GIGAスクール構想とは、2019年に提唱された小中学生の児童生徒に1人1台の学習用端末と学校の高速ネットワーク環境などを整備する文部科学省の取り組みのことです。GIGAは「Global and Innovation Gateway for All(すべての児童生徒のための世界へつながる革新的な入り口)」の略称となっています。
GIGAスクール構想の目標は、ICT活用によって子供の学びの機会を公正に行き渡らせる環境を整え、子供の育成に携わる教師の負担を軽減しつつ、その力を最大限生かせる環境を作ることです。ICTの導入が主体的かつ対話的な学びを実現するとされ、学びの深化や転換が起こり、授業の改善が期待されています。
文部科学省はICT教育を「もはや学校のICT環境は、その導入が学習に効果的であるかどうかを議論する段階ではなく、鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっている」と位置づけました。今後も多くの学校でICTが普及し、学習環境の整備がますます進むでしょう。
【参考】 「GIGAスクール構想の実現へ」(文部科学省)
【出典】 「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」(文部科学省)
新型コロナウイルス感染症の影響
2020年以降、教育現場は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けることになりました。感染拡大にともない、全国の小中高で一斉休校が実施され、教室での対面授業が困難になった時期もあります。こうした環境の変化に備え、環境整備のためにICT教育を導入する重要性・必要性が高まっています。
教育現場が備えるべき対象は、感染症だけではありません。大規模な自然災害や社会情勢の変化など、未知のリスクにさらされる可能性もあり得るでしょう。こうした予測困難な時代は「VUCA」と呼ばれ、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)という特徴があるといわれます。
常に新たな知識を吸収し、テクノロジーを活用しながら臨機応変に適応していくことは、予測困難な時代で生き残る上で重要な能力です。今後の教育現場にも、適応力が求められると考えられています。
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ICT教育導入のメリット・効果
ICT教育は、単純に社会の変化に対応した教育方法というだけでなく、教育現場の問題を解決する様々なメリットや効果があります。
教員にとっては業務の負担軽減や教員同士の情報共有に生かすことができ、生徒にとっては授業へ集中しやすく、学習に興味関心を持ちやすい環境を提供することができます。ここからは、ICT教育導入によるメリットや効果を具体的にご紹介します。
<ICT教育導入のメリット・効果>
メリット・目的
具体例
学習効率の向上
・端末を用いることでノートへ書き写す板書の負担を減らせる
・板書が必要なくなるため、授業に集中しやすくなる
・注目されるのが苦手な生徒でも、システムを通じて意見や質問を出しやすくなる
・教員が端末で情報を素早く入手できるため、授業の品質向上が期待できる
教員の負担軽減
・授業に用いる資料を印刷、板書の手間を軽減できる
・資料や板書の内容などを再利用し、準備や作業の負担を減らせる
情報共有の簡易化
・教師間で授業内容を共有すれば、授業の品質を安定化させやすくなる
・授業の進捗状況を見える化することで、教師間の連携も取りやすくなる
生徒のモチベーション向上
・受け身ではなく主体的・協同的な授業を行いやすくなる
・画像や動画の活用により、生徒の興味・関心を高めやすくなる
・デジタル機器を使う楽しさ・新鮮さで学習意欲が高めやすくなる
生徒のITリテラシー向上
・パソコンやタブレット端末の操作などIT機器の知識やスキルを取得できる
・必要な情報を取捨選択し活用する力を鍛える効果が期待できる
学習効率の向上
ICT教育を導入することによって、生徒の学習効率が向上します。例えば、従来は教師が黒板に書いた内容をノートに書き写して授業の記録を取り、それを読み返すことで記憶の定着を図っていました。しかし、ICT教育ではタブレット端末などを用いるため生徒は手を動かす必要がなくなり、より授業に集中できる環境が手に入るでしょう。
質問や回答をICTで受け付けるシステムも登場しており、授業中に手を挙げたり周りから注目されたりするのが苦手な生徒でも意見を言いやすくなります。ICTを活用すれば、これまでの受け身の授業から、生徒全体が能動的になる授業へと変えていくことができます。
教員の負担軽減
授業そのものや授業の準備だけではなく、保護者対応や部活動顧問など、教員はさまざまな業務を抱えています。こうした教員の負担は現場において問題視されており、いかにして業務量を減らしていくかが課題とされているのです。
ICT教育を導入することによって、授業に用いる資料をプリントアウトする手間や板書する手間など、細かい教員の負担が軽減されます。
ICT教育導入によって空いた時間は、授業内容を固める時間や雑務を行う時間などに回せるため、結果的に教育の質が上がる効果が期待されています。
情報共有の簡易化
授業データや授業で使用した教材などを教員間・生徒間で簡単に共有できる点も、ICT教育を用いる大きなメリットです。パソコンやタブレット端末に授業で使用する資料をまとめることによって、資料を配布する時間も短縮でき、効率的かつスムーズに授業が進みます。
教員間での情報共有は良い教材や授業方法を知る機会にもなるため、相乗的に教育の質が高くなる効果もあるでしょう。
生徒のモチベーション向上
生徒の学習に対するモチベーション向上も、ICT教育を導入するメリットに挙げられています。ICT教育はまだそれほど一般的ではないため、デジタルツールを活用した授業を新鮮に感じる生徒も多いでしょう。
タブレット端末や電子黒板を用いた学びによって、授業そのものに対する生徒の興味関心を高める効果が期待できます。
ICT教育を実施する際には、生徒が興味を持つかどうかの観点で問題やアニメーションを作成してみるとよいでしょう。もちろん何を教えるかという授業の内容も大切ですが、生徒が授業に関心を持って取り組める仕組みも重要です。
生徒のITリテラシー向上
ICT教育で情報化が進むと、学習をサポートする教員側はもちろん、生徒側もIT機器の知識やスキルを取得できるようになります。IT活用が重視される社会において、パソコンやタブレット端末の操作をはじめとした情報活用能力は、生きる上で不可欠な力の一つです。ITリテラシーの向上により、必要な情報を取捨選択・活用し、自らの頭で考える力を鍛える効果が期待できるでしょう。
近年では、ITリテラシーの欠如が思わぬ事故を引き起こすケースも少なくありません。たとえば、企業のセキュリティインシデントやSNSアカウントに関連するトラブルなどは、主にITリテラシーの問題として認識されています。IT活用に際して、基本的な知識やスキルを身に付けさせておくことが大切です。
ICT教育のメリットや効果を踏まえて授業内容の開発・改善をする際は、文部科学省が提供している情報を参考にできます。今後にICT教育の導入や充実化を検討する際は、ぜひ以下のポイントをチェックしてみてください。
【出典】 「ICTを活用した教育の推進に関する懇談会」報告書(中間まとめ)」(文部科学省)
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ICT導入のデメリット・問題点
多くのメリットがあるICT教育ですが、デジタルデバイスの使用やインターネット環境が前提となることで、その費用や環境の安定性に関する問題もいくつか存在します。
ICT教育の導入を進める前に、何が課題となっているのかをしっかりと把握しておきましょう。ここでは、ICT教育を導入する際の3つの課題点を紹介します。
導入コストの発生
ICT教育を導入するためには、一定のコストが発生することは避けられません。この点はICT教育において最も大きな課題と言えるでしょう。
ハード面では、パソコンやタブレット端末、電子黒板などの購入、ソフト面では、ICT教育用のソフトなどの準備が事前に必須です。生徒の数が多ければ多いほど用意すべき数量も多くなるため、しっかりと計画を立てた上で導入プロジェクトを進めていかなければなりません。また、ネット環境の整備も進めていく必要があるでしょう。
準備段階だけではなく、精密機器を取り扱う観点から考えると、保守費用や故障に伴う修理費用もあらかじめ見積もっておく必要があります。ICT教育を円滑に進めるためには、運用時にもある程度の費用が発生することは避けられません。
通信トラブル発生による影響
ICT教育はその特性上、オンライン環境下にあってこそ大きな力を発揮します。しかし、オンライン環境を前提とした運用には、通信トラブルがつきものだということを理解しておきましょう。
万が一、通信トラブルが発生した場合は、想定していた授業そのものが続けられなくなるケースもあります。トラブルの原因となり得る地震や通信災害は日本においても頻繁に発生しますが、状況によっては最低限の教育を担保できなくなることもあるかもしれません。
そのため、もしインターネットが繋がらなくなったとしても、円滑に授業を継続するための代替案を用意しておく必要があるでしょう。
地域間・私立公立間の格差
都市か地方か、あるいは私立か公立かでICT導入のハードルが大きく変わる点も課題の一つです。私立の学校であれば予算が潤沢にあるケースが多いため、パソコンやタブレット端末などの購入ハードルは比較的低いと考えられます。しかし、公立の学校では予算に制限もあるため、導入へのハードルはより高くなるでしょう。
この状態が長年にわたって続いていくことで、日本全体で見た場合の教育格差が広がっていく懸念があります。いかにしてフラットにICT教育を導入し、均一な教育が施されていくのかが今後のカギとなるでしょう。
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ICT教育の導入事例
ICT教育は現在多くの教育現場において導入が進んでいますが、実際はどのような取り組みが行われているのでしょうか。
ICT教育の導入を検討するにあたり実例を参考としたい方へ向けて、eラーニングシステムを導入している小学校の事例を紹介します。
同志社小学校
同志社小学校の導入事例をご紹介します。同校は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で休校期間が長引き、児童の自宅での学習環境づくりに課題を抱えていました。小学生にもデジタルに不慣れな保護者にも、シンプルで分かりやすく使用できるeラーニングコンテンツの作成が急務となっていたのです。
そこで同校では「learningBOX」を導入し、オンライン授業など休校中でも自宅学習できる環境を構築しました。休校期間が終了した後も、自宅での課題の確認用に動画をアップしたり、クラスの予定表や学級通信をアップしたりして活用しています。
また、授業の動画を教員同士で共有して意見を交換するなど、授業の質向上にも役立っています。
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ICT教育を導入してデジタル化に対応していきましょう
現代社会においては、いかにデジタル化に順応しそのシステムを活かしていくかが非常に重要です。それは教育現場においても同様と言えるでしょう。メリットや課題を比較した上で、少しずつでもICT教育の導入を進めていくことをおすすめします。
ICT教育をこれから導入していきたい方は、ぜひ「learningBOX」をご検討ください。eラーニングシステムのlearningBOXは、教材の作成配布・成績管理・受講者管理の機能がすべて揃っています。誰でも簡単に、Web学習環境を構築できるのがおすすめのポイントです。
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