コンプライアンス違反のパワハラとは?定義や類型、防止対策まで
近年、多くの企業でコンプライアンスの取り組みが重要視されています。特にコンプライアンス違反と考えられているのがパワハラ(パワーハラスメント)です。現代では全ての企業にとって、コンプライアンスとパワハラは意識しなければならないキーワードとなっています。
この記事ではコンプライアンスの意味や重要性、パワハラの定義や類型、防止対策について解説します。社員向けのコンプライアンス研修について検討している管理職の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
コンプライアンスとパワハラに関する基礎知識
まずは、コンプライアンスとパワハラに関する基礎知識を把握しておきましょう。コンプライアンスの意味と重要視されるようになった背景、コンプライアンスに抵触するパワハラの概要について解説します。
コンプライアンスの意味や重要性
コンプライアンス(Compliance)は日本では「法令遵守」と訳されるのが一般的です。
具体的には、企業がルールや社会規範などを守って業務を行うことを指します。ここでいう「ルールや社会規範」とは法律、就業規則、企業倫理などです。
コンプライアンスの取り組みには、従業員による違反行為や不祥事などを防ぐために企業活動を適切に管理し、リスクマネジメントを徹底する目的があります。この目的を達成するためにコンプライアンス体制の整備、コンプライアンス部門の設置、コンプライアンス研修の実施などが必要になります。
コンプライアンス違反となる「パワハラ」とは?
パワハラとは、「パワーハラスメント」の略語です。加害者が社会的に優位な立場を利用し、弱い立場にある者へ肉体的・精神的な苦痛を与えることを意味します。
厚生労働省は以下の3要素を満たす行為をパワハラとして定義しています。
- ①優越的な関係を背景とした言動
- ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- ③労働者の就業環境が害されるもの
【出典】 厚生労働省 あかるい職場応援団|「ハラスメント基本情報」パワーハラスメントの定義
パワハラ防止に関連する法律
2019年5月に「労働施策総合推進法」が改正され、職場のパワハラ防止(通称:パワハラ防止法)が義務化されました。大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から改正内容が施行され、パワハラ防止に向けて取り組むことが義務化されました。
労働施策総合推進法が改正された背景にあるのは、近年目立つようになってきたハラスメント問題の被害増加です。職場においていじめや嫌がらせなどパワハラに該当する被害を受けたという相談が相次いでいます。
また、精神障害による労災補償の件数は年々増加傾向にある状況です。
厚生労働省の調査では、職場内の上下関係や人間関係による被害が多いことがわかっています。労働局へ寄せられるセクシャルハラスメント(セクハラ)やマタニティハラスメント(マタハラ)など、その他のハラスメントの相談件数も増加傾向です。
【出典】 厚生労働省 あかるい職場応援団|「ハラスメント基本情報」データで見るハラスメント
目次に戻るコンプライアンス担当者が理解すべきパワハラの類型
パワハラにはさまざまな種類があり、防止に取り組むためには種類に応じて対策することが重要です。
以下では、職場で起こる代表的な類型について解説します。個別のケースのなかには、類型に該当しない例も存在します。
パワハラに関する相談窓口では、類型に当てはめることにこだわらず、幅広い違反事例へ柔軟に対応する必要があります。
身体的な攻撃
相手の身体に対して物理的な攻撃を与えるパワハラ行為です。仕事に関する指導や注意でも、業務上適正な範囲を超えるとパワハラに該当します。
例として、叩く、殴る、蹴る、物を投げつける、胸ぐらを掴むなどは、明らかなパワハラ行為です。
精神的な攻撃
相手の人格や名誉を傷つける、暴言などで攻撃するパワハラ行為です。脅迫や侮辱なども精神的なパワハラに含まれます。
大声で威圧的に罵倒する、ほかの従業員の前で執拗に叱責する、性的指向や性自認(性同一性)を侮辱するなどは、精神的な攻撃の代表例です。
人間関係からの切り離し
業務において特定の人間を集団から切り離すパワハラ行為です。物理的・精神的に孤立させる行為が該当します。
代表例として別室に隔離する、集団で無視をするといった行為が挙げられます。
過大な要求
特定の人材に対して不相応な要求をするパワハラ行為です。要求を達成できなかった際に厳しく叱責する行為も含まれます。
新人に対して非現実的な目標を課す、業務とは無関係な雑用を押し付けるといった行為が代表的です。
過小な要求
経験や能力に対して釣り合わない、程度の低い仕事を与えるパワハラ行為です。仕事を与えない嫌がらせもこちらに該当します。
管理職に雑用だけを命じる、特定の人材に仕事を与えずに退職へ追い込むといった行為が挙げられます。
個の侵害
個人のプライバシーに過度に干渉するパワハラ行為です。私生活の監視、個人情報の暴露など、さまざまな行為が含まれます。
職場外の人間関係に関する詮索、SNS上での接触なども個の侵害に該当する行為です。
コンプライアンス違反のパワハラ防止へ向けた対策
ここまでは、具体的なパワハラの類型について解説しました。
以下では、実際にパワハラを防止するための具体的な対策の例をご紹介します。
自社の実態を調査する
まずはコンプライアンス問題の発生状況を把握し、現状の職場環境の課題を発見する必要があります。
方法としては、匿名での従業員アンケート、ストレスチェック、産業保健スタッフへのヒアリングなどが代表例です。多角的な調査を行うために、複数の手法で実施すると良いでしょう。
また、調査対象の母数が少ないと結果が偏ってしまうことがあります。調査する際は一定以上の回答数を確保し、信頼性を高めるよう努めましょう。
社内でルールや体制の周知を行う
ハラスメント対策のルールや体制について、社員へ周知させましょう。そのために、就業規則におけるハラスメント防止の指針や措置、相談窓口の利用方法などについて社内で共有しておきます。
従業員は、パワハラをそこまで重く受け止めていないケースがあります。そのため、事業主がパワハラ防止を重要な課題と認識していることを積極的に発信していくことが重要です。
従業員を教育する
定期的にハラスメント防止研修を実施し、従業員による理解を深めることも重要な取り組みです。パワハラを防止する意識は、全ての従業員に求められます。そのため新入社員から管理職まで、全社員が研修を受講できると理想的です。
階層別に研修を実施する方法もあります。その場合、役職に応じて必要なコンプライアンスの意識を教育できるのがメリットです。
eラーニングシステムを活用すると、受講の仕組みを整備しやすくなります。
パワハラ防止はすべての企業に求められるコンプライアンスの取り組み
パワハラは重大なコンプライアンス違反です。パワハラ防止法が施行され、経営層や管理職の間ではコンプライアンスを徹底する意識が根付いてきています。
しかし、従業員全員がその意識を共有することは容易ではありません。声掛けや注視をするだけではなく、コンプライアンスを教育するための仕組みが求められます。
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