eラーニングとは?重要性が増した5つの理由やメリット・デメリット
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて対面の研修や学習が難しくなっていることもあり、eラーニングの需要がますます高まっています。eラーニングはいつでもどこでも受講できるため、在宅ワークが増えている現在は特に導入する企業が増えてきています。
そのような背景もあり、今後eラーニングの導入をお考えのご担当者様も多いでしょう。しかし中には「そもそもeラーニングって何?」「なぜeラーニングの利用が増えているの?」といった疑問を持つ方もおられるのではないでしょうか。
そこで今回は、eラーニングが普及した背景を交えながら、特徴や強みだけでなく苦手とするところも含めて解説していきます。eラーニングについて知りたい方や、これからeラーニングシステム導入をご検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
eラーニングとは
eラーニング(イーラーニング、e-learning)とは、インターネットを利用した学習システムを意味する「electronic learning」の略称です。ビジネスシーンでは人材育成のためのツールとして取り入れられています。「オンライン学習」「Webラーニング」「eラン」「WBT」などの用語も同じ意味で使われることがあります。
多くのeラーニングシステムでは、HTML/CSS/JavaScriptなどで制作された教材や動画教材を、Webブラウザを使って学習するのが一般的です。スマートフォン普及以前はパソコン主体で利用されていましたが、今では多くのeラーニングサービスがパソコンだけではなく、スマートフォンやタブレット端末にも対応しています。
目次に戻るeラーニングの歴史
eラーニングという学習形態は、インターネットの普及やモバイル端末の進化とともに発展し、私たちの生活に浸透してきました。ここでは、eラーニングが現在の形になるまでの歴史をご紹介します。
<eラーニングの歴史>
年代 | 世の中の動き |
---|---|
①1950年代 ~ アメリカでスタート | 「コンピュータで教育を支援できないか」という考えから、アメリカを中心に開発が始まる。 |
②1990年代 ~ Windows95の登場・発売 | 「パソコンの発達・普及」に従って、主にCD-ROMを教材とした学習方法が進む。 1995年、爆発的人気となったWindows95が発売され、一般家庭にもパソコンが普及。 |
③2000年代 ~ 日本でも本格的に | 2000年、当時の森内閣が日本型IT社会の現実を目指す「e-Japan戦略」を打ち出す。 |
④2000年代 ~ スマホ・タブレットの普及 | 2000年代後半からiPhone・Androidに代表されるスマートフォンや、さらに大型のタブレット端末が登場し、eラーニングはさらに大きく変化する。 |
⑤2020年代 ~ コロナ禍により市場が急成長 | 新型コロナウイルス感染症の拡大により、学校では在宅学習、企業では在宅勤務が一気に進む。 |
eラーニング登場以前の集合学習とCAIの開発
従来の集合学習や集合教育は、時間や費用の面で課題がありました。具体的には、生徒と講師が同じ時間に同じ場所にいる必要があるため、準備や移動の手間、交通費がかかりやすい点です。また、全員が一律で同じ学習を受けながら進めるため、学習者側の理解度に差が出やすい点も挙げられます。
そこで、学習者の理解度に応じて学習内容を提示するシステムであるCAIが開発されました。CAIは「Computer Aided Instruction」の略称で、コンピューターを利用した教育を意味します。
CD-ROMを利用した学習「CBT」の誕生
1995年にはWindows95が発売され、多くの家庭や企業にパソコンが普及しました。そこで登場したのが、CD-ROMを利用した学習形態です。CBT(Computer Based Training)と呼ばれ、動画や画像、音声などを多用したマルチメディア教材によって学べる環境が構築されました。
しかし、CBTにはCD-ROMの作成コストやプログラム修正のしづらさ、企業側が学習者の進捗を管理できないなどの課題もありました。
インターネットを利用した学習「WBT」への進化
CBTの問題点を踏まえて開発されたのが、Webベースのシステムを利用した学習を指すWBT(Web Based Training)です。WBTでは学習教材や学習履歴をサーバー上で一括管理でき、CBTの弱点を克服しています。学習者にとっては、インターネットに接続すれば自由な時間・場所で講義を受けられるのもポイントです。
現代では、上記のようなオンラインでの学習スタイルをeラーニングと呼び、企業における研修やナレッジの共有、通信教育などさまざまなシーンで活用されています。
マルチデバイスやSNSを活用した近代のeラーニング
21世紀に入るとスマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末が普及し、eラーニングもパソコンだけではなく、マルチデバイス対応へのニーズが高まっています。スマートフォンやタブレット端末での視聴が可能になることで学習に対するハードルが下がり、知識の習得や学習意欲の向上が期待されます。
また近代のeラーニングでは、管理者から学習者への一方的なフィードバックだけでなく、学習者同士のコミュニケーションを促進するためにSNSを活用するのもトレンドです。専用窓口や掲示板、社内SNSなどを設置し、学習者からの書き込みや質問を募ることでモチベーションアップにつなげる狙いがあります。
目次に戻るeラーニングの重要性が増した理由
なぜ近年、eラーニングの重要性が高まっているのでしょうか?ここではその中でも特に大きな理由を5点挙げてみます。
理由1:コロナ禍によって集合研修が困難に
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、研修会場までの移動や研修会場に集まること自体が制限されるようになりました。多くの学校では登校をとりやめ、リモートで授業を行うなどの対応をとっています。一方的に授業や研修プログラムを提供するのであれば、ZoomなどのWeb会議サービスで十分ですが、理解度を測定したり課題を提出させたりすることはできません。
そこでeラーニングシステムを導入することで、いつでもどこでも学習者ごとの得点や学習状況、課題の提出状況などを把握することができるため、管理者側にも学習者側にもさまざまなメリットがあります。
理由2:通信環境・情報機器の普及
自宅や会社に光回線が普及し、スマートフォンでも4Gや5Gといった高速大容量通信が普及したことで、動画の閲覧もスムーズにできるようになりました。通信環境が改善したことでデータをサーバー上で一元管理し、利用者は必要なタイミングでデータを取得する運用がしやすくなったこともeラーニングの普及に影響しています。
文教分野においての普及
文部科学省の推進するGIGAスクール構想によって、小中高において生徒1人に1台の学習者用端末が与えられはじめています。学校の方針によって、生徒や児童がどれだけ自由に端末を使えるのか、自宅に持ち帰り可能なのかは異なるようですが、少なくとも1人1台の端末を専有して使える環境になりつつあります。
また、ほとんどの学生がスマートフォンを持つようになりました。初期のスマートフォンはパソコンと比べると性能が劣り、できることも限られていました。しかし、最近はスマートフォンの性能が向上し、パソコン向けに作られたWebコンテンツもほぼ問題なく閲覧できるようになりました。多くのWebサイトにおいてはパソコンよりもスマートフォンからのアクセスのほうが多くなっており、今ではWebサイトの多くはスマートフォン向けに最適化されています。
一般への普及
モバイル社会研究所の調査によると、15歳から79歳の男女におけるスマートフォン・携帯電話所有者のうち、スマートフォンの所有率は2022年には94%に達したといわれています。
勤労世代におけるスマートフォンの所有率はより高く、セキュリティ面の検討が必要であるとはいえ、私物端末を用いたeラーニングの提供も現実的になっています。
eラーニングでは同一のコンテンツを多数の学習者に提供するケースが一般的であり、高度な機密性が求められない場合もあります。高度な機密性が求められる場合は、社内のPCからでないと学習できないよう制限するなどの対策が必要になります。
理由3:仕事の高度化
情報化の進展と共に、仕事を進めていく上で必要な知識は圧倒的に増えました。学校で学んだ知識や技術で一生食べていけるような時代ではありません。勤労者は、常に新しい知識と技術を身に付けていく必要があります。新しい知識と技術はタイムリーに手に入れる必要がありますし、教えることができる人が近くにいるとは限りません。
テレワークが一般的になったこともあり、今は場所を問わず働けるようになりました。東京の本社で作成された業務マニュアルや法改正に関する資料を、全国に点在する拠点に展開するためにはeラーニングが適しています。
理由4:中途採用・転職の一般化
現在は転職が一般的になりました。新卒入社した会社を定年まで勤め上げるということは少なくなっていきています。これにより採用時期や入社時期がバラバラになり、現在は新卒を一括採用し1年かけて同じ教育研修を行うのではなく、入社時期に応じて研修を行うようになっています。
入社のたびに教育担当者が時間をとって教育していると、本来やるべき業務に支障が出ることもあります。中途採用は職種やスキルも様々なので、全員が同じ教育レベル・スピードでは非効率ですし、学習者側のモチベーションも上がりません。
そのような場合は、eラーニングを使うことで、理解度に応じて一人ひとりに適した研修を用意することができ、効率的に研修を行うことができます。
理由5:ドキュメント共有システムのみでは不十分
マニュアルを配布するという目的であれば、Google ドキュメントやGoogle スプレッドシートなどのドキュメント共有システムで十分なようにも思われますが、ドキュメント共有システムでは閲覧状況や学習状況を十分に把握できません。
また、確認テストなどを実施することができず理解度を把握することも難しいので、「学習することが必須かつ、学習したというエビデンスを残す必要がある場合」はeラーニングシステムが適しています。
目次に戻るeラーニングを導入する効果・メリット
現在従業員の教育方法や社内に蓄積したナレッジの共有、人材育成などにお悩みの場合は、eラーニングの導入がおすすめです。eラーニングは、管理者と学習者の双方にメリットをもたらします。詳細は以下の表をご確認ください。
<eラーニングを導入する効果・メリット>
管理者 | ・ コスト削減が期待できる ・ 学習者の進捗や成績、出席情報を一元管理できる ・ 教材の修正や最新内容へのアップデートが行いやすい ・ 学習者ごとに適切な学習教材を提供しやすい |
---|---|
学習者 | ・ 繰り返し受講できる ・ 場所や時間の制約が少なくなる ・ 学習の進捗状況や理解度を把握しやすい ・ スマートフォンやタブレット端末などで手軽に取り組みやすい |
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eラーニングのデメリットとその対策
eラーニングの弱みを把握しておくことで、eラーニングを導入した際に対策をすることができます。具体的な対策方法を解説しますので、ぜひご活用ください。
モチベーションの維持が難しい
eラーニングの場合、教育者と学習者が直接顔を合わせることはありません。そのため学校などの教育現場や企業の集合研修と異なり、教育者の技量でモチベーションを維持させることができません。
モチベーションを維持するために面白味のある教材や学習効果のある教材を用意することはもちろんですが、eラーニングにおいては仕事の合間や移動中のスキマ時間で学ぶことが多いため、”マイクロ”な教材構成が好まれます。一般的な学校の授業や集合研修では1コマ45分~90分程度ですが、eラーニングでは1コマ数分程度が望ましいといわれています。
また、eラーニングにおいてはソーシャルゲームで用いられるようなランキング、バッジ(メダル)、ギルド(チームで協力させる・連帯責任)などのシステムを使い収集欲や競争心を呼び起こす工夫がされていることもあります。
学習者の顔が見えない
「顔が見えない」状態は、学習者の理解度や感じていること、疑問などが分からないということにもつながります。理解度をチェックするための問題を含めれば、理解度について把握できるでしょう。感じていることや疑問については、レポート形式の問題やアンケートに答えてもらうなどの方法で確認できます。
eラーニングはオンライン上で学習を完結することができ、顔が見えないからこそ丁寧なコミュニケーションをとっていく必要があります。
コンテンツの確保が難しい
教材を一から作ろうと考えると難しく感じるかもしれませんが、eラーニングシステムによっては、すでにあるコンテンツをアップロードして使用することもできます。
学校の場合
学校向けのeラーニングシステムの中には、教育指導要領や教科書に沿った教材が提供されているものがあります。そのようなeラーニングシステムを導入することで、教材作成の手間なくeラーニングを導入できます。
民間企業の場合
業務に直結する内容の場合は、既成の教材は存在しないため、社内で制作するか、eラーニング教材の制作会社を使って作成することになります。外注業者を利用すると見栄えのする立派なコンテンツを作りやすいですが、費用もかかりますし、内容を更新しづらくなるので、外注と社内対応の使い分けが大切です。
目次に戻るeラーニングの導入に必要なもの
eラーニングを実施する際は、主に学習管理システム(LMS)と学習教材の2つを用意する必要があります。ここでは、それぞれについてご紹介します。
学習管理システム(LMS)
LMSとは、「Learning Management System」の略称で、eラーニングの学習教材の作成や配信、学習の進捗や成績を一元管理できるシステムです。効果的なeラーニングの実施を支える環境整備の土台となります。
学習教材
高品質なシステムを用意しても、学習効果の高い教材がなければ宝の持ち腐れになります。質の高い教材を作成できるよう、クイズやテスト、アンケートなどの多様な種類を作成・選択できるシステムも登場しています。
学習教材を用意する際は、目的や予算に応じて以下の3つの方法から最適なものを選択しましょう。
- 営業やPCスキルなどの分野に特化した教材を提供する会社の既製品を利用する
- eラーニングを提供する会社に制作を依頼する
- 自社のリソースのみで制作する
eラーニングを活用して効率的に学習できる環境を構築しよう
今回は、eラーニングの歴史や重要性が増している理由、メリット・デメリットなどをお伝えしました。eラーニングは今後ますます利用者が増え、今よりも多くのシーンで導入が進むと予想されます。メリットを生かしつつデメリットをうまくカバーすることで、効率的に学習できる環境を構築しましょう。
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