残業の強制はパワハラや違法に該当する?企業が採るべき予防策

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職場では業務上の事情から、時間外労働(残業)が発生してしまう場合があります。

そのなかでも、優越的な関係を利用して故意に残業を強いるようなケースは、「パワーハラスメント(パワハラ)」に該当することも。また、従業員の状況によっては残業を命令できない場合もあります。

本記事では、職場で注意すべき残業の強制とパワハラとの関係性や、パワハラ防止へ向けて企業が取り組むべき対策について解説します。

目次

残業の強制とパワハラの関係性

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残業とは、会社の指定した労働時間(所定労働時間)や法律で定められた労働時間(法定労働時間)を超えて働くことを意味します。

従業員に残業を強要すると、パワハラと見なされる恐れがあるため、以下のポイントを確認しておきましょう。

残業の強制はパワハラに該当する可能性がある

厚生労働省の定義によると、職場におけるパワハラは「①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」の3つの条件を満たすものとされています。

【出典】 「ハラスメントの定義」あかるい職場応援団 厚生労働省icon

職場におけるパワハラは、上司から部下に対するもの、先輩から後輩に対するものなど、立場の違いを利用するのが一般的です。こうした上下関係においては、立場の弱い相手に不当な残業を指示しやすいといえます。

残業の強制が上記の条件を満たす場合は、パワハラと評価される可能性があるでしょう。上司やリーダーなど優越的な立場を有する人が部下に残業を命令する際は、特に注意が必要です。

残業の強制に関してパワハラにあたる行為の具体例

残業は通常の業務の範囲でも発生する場合があります。そのなかでも不当な残業の強制に該当するのは、故意に到底終わらない量の仕事を課して、残業を強いるようなケースです。単に仕事量が多いだけではパワハラには該当しません。

また、割増賃金が生じない残業(サービス残業)を強制するのもパワハラに該当します。タイムカードを切った従業員に残業させる違反行為は、サービス残業の強制にもあたるため、避けなければなりません。

ほかにも、必要性の低い仕事を頼んで残業を命令する例も挙げられます。定時間際に大量の仕事を押し付けたり、プライベートの予定があると分かっていながら残業を強制したりするのも、不当な指示といえるでしょう。

上記の例のような行為を優越的な立場を利用して行い、労働者に身体的・精神的な苦痛を与えると、パワハラと見なされる可能性があります。

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残業の強制はできる?

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業務上で残業命令を出すには、一定の条件を満たす必要があります。また、労働者の状況によっては残業命令を出せない場合もあるため、違法にあたるケースを押さえておきましょう。

残業命令を出すための条件

使用者が法定労働時間を超える残業を命令するには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  • 36協定(労働基準法第36条に基づく労使協定)が結ばれている
  • 行政官庁への届出が行われている
  • 就業規則や労働契約に残業に関する規定がある

ただし、労働者の側に正当な理由があれば残業命令の拒否も可能です。たとえば、体調不良やけがなど健康上の問題がある場合は、残業を断ることができます。

残業命令を出すことのできない労働者

妊娠中または出産から1年未満の労働者

妊娠中または出産から1年未満の女性は「妊産婦」と呼ばれます。事業主は妊産婦から請求された場合に、残業や休日労働、深夜労働を命令できません。

家族の介護をしている労働者

労働者が同居の家族を介護している場合、事業主は労働者からの請求によって、残業の命令に制限を受けます。月24時間・年間150時間を超える残業は命令できません。

未就学児の看護をしている労働者

未就学児とは、まだ小学校に通う年齢に達していない子どもを指します。事業主は、未就学児を養育している労働者から請求された場合に、月24時間・年間150時間を超える残業を命令できません。

3歳未満の子どもを養育している労働者

3歳未満の子どもを養育している労働者から請求があった場合、事業主は残業を命令できません。労働者は所定労働時間を超える就労を断ることができます。

残業の強制が違法にあたるケース

36協定が締結されていない

36協定を結んでいない状態で残業を強制すると、労働基準法違反となります。6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法第119条第1号)が科されます。

労働契約に残業なしと明記されている

労働契約書に残業なしと明記されているケースでは、法律上は残業を命じることができません。残業命令を行うと、労働基準法に違反していると見なされます。

残業命令が36協定や法律の上限を超えている

36協定には、原則として月45時間・年間360時間の残業の上限があります。

特別条項付き36協定では、月45時間を超える残業は年間6回までと定められています。年間の上限は720時間以内、月の上限は100時間未満です。また、2~6カ月間の平均が80時間以内である必要があります。

36協定や特別条項付き36協定を結んでいる場合であっても、上限を超える残業を命じることはできません。

【出典】 e-Gov「労働基準法 第三十六条」icon

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残業に関するパワハラを防ぐために企業ができること

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多くの企業で起こり得る、残業に関するパワハラの問題。最後に、適切な労働環境を守るために、自社で取り組むべきことをご紹介します。

ハラスメント研修を実施して周知を図る

社内研修を実施することで、パワハラに対する正しい知識の習得や問題の早期発見につなげましょう。

その際は、階層や役職別に研修内容を区別しても良いでしょう。管理職向け・一般従業員向け・ハラスメント相談窓口担当者向け・人事労務担当者向けなど、個別にプログラムを用意する方法もあります。

組織のトップがメッセージを発信する

パワハラ防止の重要性について、組織のトップが認識するとともに、積極的に取り組む姿勢を見せるのも重要です。経営層が自らパワハラ防止を重視することを明確に示し、周知に努める必要があります。

相談窓口を設置する

社内にハラスメント相談窓口を設置して、被害に悩む従業員へ利用を促すと良いでしょう。パワハラのほか、幅広いハラスメントの問題に対応できると理想的です。また、相談窓口の存在の周知にも取り組みましょう。

問題が発生した場合に厳しく対処する

もしも社内でパワハラが発生したら、被害を食い止めるために速やかに対処し、徹底して再発防止へ努めます。場合によっては、加害者への処分を検討することも必要です。社外の専門家への相談も視野に入れましょう。

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残業強制などパワハラ関連の啓蒙活動にはeラーニングを活用!

残業の強制はパワハラに該当する可能性があります。残業命令を出す条件を確認のうえ、不当な命令が行われないよう、組織的にパワハラ防止へ取り組みましょう。

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