法令遵守だけではない!企業倫理とコンプライアンスについて

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経営活動においてコンプライアンスが重要視されている今、課題の一つとしてコンプライアンス対策を推進する企業は数多くあります。しかし「法令遵守こそがコンプライアンスだ」という認識を持つ企業が多く、その本質について理解している企業は少ないかもしれません。

今回はコンプライアンスを理解する上で知っておきたい企業倫理について触れながら、企業のコンプライアンスについて詳しく解説していきます。

企業で人事を担当している方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

企業における「コンプライアンス」とは?

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企業におけるコンプライアンス(compliance)とは、社会から信頼を得て企業価値を維持することを目的としています。

もちろん国が定めた法律を守るという捉え方でも間違いはありませんが、実はそれだけではありません。社会的な良識を持ち企業倫理に沿った行動を取ることも、企業のコンプライアンスに含まれているのです。

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コンプライアンス違反の事例

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コンプライアンスが国内で注目されてきたのは1990年代以降です。当時多かった企業不祥事が引き金となり、コンプライアンスという言葉が浸透してきました。

具体的にコンプライアンス違反とはどのようなことを指すのか、順に詳しく見ていきましょう。

労働時間管理の不備

コンプライアンス違反として厳しく取り締まられるのが、時間外労働や残業代の未払いなどによる労働時間管理の不備(労働契約法違反)です。これらに違反すると、労働基準監督署による調査で是正勧告を受けることになってしまいます。

36(サブロク)協定を締結していない企業は、従業員に1日8時間、週40時間を超える労働を強いると法令違反と見なされるので注意しましょう。

パワハラ・セクハラ

「パワーハラスメント(パワハラ)」や「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」のような各種ハラスメントも、コンプライアンス違反になり得ます。
ハラスメントは個人の問題ではなく会社の責任として、安全配慮義務違反を追求されることがあるので注意が必要です。

また今ではハラスメントの種類は多岐にわたり、「モラルハラスメント(モラハラ)」や「マタニティハラスメント(マタハラ)」といった言葉も出てきています。

働く全ての人がハラスメントに関する理解を深め、問題が起こらないように業務の中で配慮しなくてはなりません。

情報セキュリティの不備

情報セキュリティの不備によるコンプライアンス違反もあります。代表的なもので言えば、従業員の不正な持ち出しやハッキング被害による個人情報の流出です。

昨今はリモートワークの普及により、個人の情報の取り扱いに対する認識が薄れていると危惧されています。企業は情報漏えいを未然に防止するため、情報セキュリティ対策を徹底しなければなりません。

不正会計

過去のコンプライアンス違反の事例として多いのが、売上や経費の架空計上、会計書類の改ざんといった不正会計です。

営業目標を達成させるために資金流用を隠ぺいしたり、脱税目的で経費を水増しして利益を少なく報告したりするなど、コンプライアンス違反に至る経緯は企業によって異なります。

いずれも企業の信頼を損なう違反行為であり、有価証券報告書虚偽記載罪や詐欺罪として厳しく罰せられる可能性があるのです。

不正受給

不正受給は、国からの助成金や補助金を不正に受け取る行為です。

助成金や補助金を受け取るには制度ごとに定められた条件を満たす必要がありますが、虚偽の内容を申告して不正に受給するケースがみられます。この不正が明るみになれば支給額の返還請求に加え、追徴金を課せられるケースもあります。

商品・サービスの不当表示

商品・サービスの不当表示(景品表示法違反)は、サービスや商品に関して誇大な広告を打ったり紛らわしい表現で消費者に誤った情報を伝えることです。
具体的には、根拠のないデータで商品を売り込む、限定数量とうたいながら実際にはそれ以上の数を販売しているなどがあります。

また、根拠なしに「必ず痩せる」「免疫を高める」といった効果を伝えると、薬機法に抵触する可能性もあるでしょう。

衛生管理の不徹底

衛生管理の不徹底は、特に飲食店で問題となっているコンプライアンス違反です。衛生上食品に実施すべき処置を行わず利益率や回転率を優先させた企業が、集団食中毒を引き起こした事例は過去に何度もあります。

また、産地や消費期限を偽装した場合も厳しく処分を受けることになるので注意しなければいけません。

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企業のコンプライアンスに必要な倫理

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企業のコンプライアンスは法令遵守だけでなく、事業活動の中で守るべき企業倫理が3段階あります。

第1階層:法令遵守

倫理の第1階層は、法令を遵守した行動を取るという考え方です。今回紹介したような労働契約法違反や不正会計などは、まさに第1階層に反する行為と言えるでしょう。

多くの企業が「コンプライアンスを守る=倫理の第1階層を守る」と認識しているのが現状です。

第2階層:社内規則の遵守

倫理の第2階層は、法令以外の社内規則を守るという考え方です。企業によって規則は異なりますが「備品の目的外使用の禁止」や「個人情報を持ち返らない」などがあるでしょう。

違反しても法で裁かれることはありませんが、企業に勤める人であれば必ず守るべきものだとされています。

第3階層:倫理的な行動

第3階層は法令でも法令でもなく倫理的な行動をしようとする考え方です。人として正しい行動をとるということであり、企業に勤めている人間としてどう正しく行動すべきかということでもあります。
企業が果たすべきコンプライアンスは、この第3階層までの範囲を指し示した言葉です。

自社がどの階層まで社員に浸透できているかどうかを今一度確認することが非常に大切と言えます。

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企業にコンプライアンスが必要な理由

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ではなぜ企業はコンプライアンスを守る必要があるのでしょうか。その理由について順番に見ていきましょう。

社会的責任を果たすため

企業が経営をするにはCSR(Corporate Social Responsibility)、いわゆる社会的責任を果たす必要があります。

CSRは社会の要請に応えるものであり、コンプライアンスよりも広義的に使われることが多い言葉です。つまりCSRを進めるプロセスの中にコンプライアンスは含まれています。

自社の利益だけを優先させず、CSRで社会とより良い関係を築いていけるような企業であることが重要です。
そうすることで、「コンプライアンス体制が徹底されている企業」という評価をしてもらえるようになるのです。

行政処分を受けるリスクがあるため

コンプライアンスに違反すると、企業は業務停止処分や業務改善命令を受ける可能性があります。

違反の程度によっては逮捕される可能性もあり、罰金刑や懲役刑を受けるケースがないとも言い切れません。行政処分や刑罰を受けることになれば、業務が行えなくなるだけでなく企業の信頼を大きく損ねてしまうことになるでしょう。

そのために日頃から、従業員一人ひとりがコンプライアンスに対する意識を高めておく必要があります。

企業イメージがダウンするため

コンプライアンス違反で新聞やニュースで報道されると、企業イメージが大きく損なわれます。
今まで良好な関係を築いていた取引先も離れていき、消費者に対しては不買や買い控えに結びつく可能性もあるでしょう。

そしてコンプライアンス違反が起こった後の対応を適切に行わなければ、事業縮小や倒産に追い込まれるケースも数多くあります。

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コンプライアンス違反を防止する方法

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コンプライアンス違反にならないよう、企業は防止対策を徹底しなければなりません。次に具体的な防止方法について見ていきましょう。

コンプライアンス対策チームを構築する

社内にコンプライアンス対策チームを設置しましょう。チームをつくる上で大切なのが「単に法律を守る」という認識をチームに持たせるのではなく、企業倫理の深い部分まで周知させることです。

そして最も大事なことは、社会的な行動規範を守るために必要な行動や姿勢であり、まさしく今回ご紹介した倫理の第3階層までの理解を指します。

また対策チームに加え、社内のコンプライアンス違反について社員が気軽に相談できるような相談窓口を設置することも大切です。

コンプライアンスプログラムを実施する

コンプライアンスプログラムの実施も防止策として有効です。コンプライアンスプログラムとは、法令を遵守して倫理にのっとった企業活動をするために企業がつくる枠組みや計画のことを指します。
具体的にはコンプライアンス委員会の設置、計画や事案の審議などを実施するなどがあるでしょう。

そしてプログラムを実施したあとは、社内で情報共有できるようにして周知を徹底させる必要があります。

内部通報者に対するケア

コンプライアンスを安全かつ未然に防ぐためには、内部通報者を保護しなければなりません。内部通報者は企業にとっては邪魔な存在ではなく、より良い方向へと導いてくれる人材です。

通報により個人が特定され、不利益を被るような体制の職場では、何か問題が起こったときに誰も関心を示さなくなります。内部通報をした社員が不利益にならないように生まれた法律が「公益通報者保護法」です。

企業は公益通報者保護法について社内全体でしっかりと共有し、通報者に対する尊重とケアをする意識を持ちましょう。

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まとめ

今回は企業倫理とコンプライアンスについて解説しました。コンプライアンスは法令遵守という言葉に置き換えて使われることが多いですが、法だけでなく倫理やモラルを守るという意味まで含まれています。

社会に携わるべき人間としてどのような行動や姿勢が望ましいのか、一度社内でコンプライアンスについて正しい理解を深める時間をつくりましょう。

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