企業が人材育成コストを削減しつつ、質を維持する具体的な方法とは?
従業員の教育は、企業の成長に欠かせない重要なものです。実際に多くの企業が従業員の教育に力を入れていますが、研修にかかる労力やコストがネックとなっている企業は多いのではないでしょうか。
この記事では、人材育成にかかるコストの目安や考え方、研修自体の質を損なわず費用を抑えるためのポイントについて解説します。研修管理、人材育成の労力やコストをカットできるおすすめのシステムも併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
企業の人材育成にかけるコストの目安
産労総合研究所の「2021年度教育研修費用の実態調査」によると、教育研修費は「従業員1人当たり2万4,841円」となっています。この数字は大企業と中小企業で大きな差はありません。単純計算すると、例えば従業員が100人いる企業の教育研修費は、年間約248万円かかっている計算になります。
そのことからも、多くの企業が人材育成に決して安くはないコストをかけていると理解できます。実際に内閣府の発表データによると、人材投資を1%増やせば労働生産性が0.6%向上することが判明しています。
また、新型コロナウィルスの影響により、教育研修費の予算削減を検討している企業も多いようです。産労総合研究所による2020年度の調査では教育研修費は3万5,628円でしたが、2021年度調査から比べると約1.1万円減少しています。感染拡大による一時的な影響であるとも考えられていますが、未だ影響を受ける企業が多く、教育研修費の増加は困難でしょう。
目次に戻る企業は人材育成のコストを削減していくべきか?
社員教育にかける費用は、高ければ高いほど良いというわけではありませんが、コストを下げた代償として人材育成の質が下がってしまうような対策は本末転倒です。教育においてコストと質はトレードオフではないため、コストを抑えつつ人材育成プロセスの質を上げていくことが重要です。
人材は企業経営するうえで欠かせない「4大経営資源」の一つで、ヒト(人材)の他にモノ・カネ・情報があります。これら4つのどれが欠けても企業の維持・存続は不可能です。人材は資産とし、人材育成のためのコストは投資と捉えると、人材育成コストは最低限必要不可欠といえます。
しかし、年々人材育成に力を入れる企業が増える中、内閣府の統計によると短期間での転職者は緩やかに増加傾向にあるようです。この結果から、人材育成のコストをかけても退職者が増えることによって、人材育成の効果が出ない可能性が高まることが推測できます。
人材育成にコストをかけても退職されては意味がないため、人材教育費の予算については慎重に検討する必要があるといえるでしょう。
目次に戻るコスト削減した方がいい費用・しない方がいい費用
人材育成が企業の成長にいくら欠かせないといっても、できる限りコストを削減したいのが本音ではないでしょうか。人材育成のためのコストには、削減できるものと削減しない方がいいものに分けられます。
研修にかかる費用の削減を見分けるには、「研修の質の低下に繋がるかどうか」というポイントに着目してみましょう。
コスト削減をした方がいい費用
交通費、宿泊費、会場費など研修の質に関係しない項目のコストは、工夫次第で削減可能です。例えば宿泊をともなう研修の場合、研修特化型のホテルを利用すれば宿泊費・会場使用料・ケータリング・食事がセットになっていることも多いため、全体のコストを削減できます。
他にも、できるだけ職場から近い貸会議室を会場として利用したり、eラーニングを活用したり、リモートで研修を行ったりなどの方法でコストを削減しましょう。
このように、研修の質に影響のない項目であれば、コスト削減するのがおすすめです。しかし、交通費削減のために新幹線ではなくバスを利用するような、従業員の負担を生むコスト削減は避けるのが得策です。このような削減手段を取ってしまうと従業員の集中力などに影響を及ぼし、研修本来の目的が果たせない可能性があります。
コスト削減しない方がいい費用
研修の質に影響するコストは、人材育成の核のため削減するべきではありません。例えば講師の依頼費用は、学ばせたい内容を提供してくれる講師にはコストを払ってでも依頼するべきです。
コストに比例して講師の質が上がるわけではありませんが、費用面で妥協して内容がニーズに合っていない講師に依頼するのは、研修本来の目的と外れてしまいます。研修に直接関係する部分は、多少コストがかかっても企業の存続・成長のために投資するべきポイントといえるでしょう。
他にも、ないと困るようなシステム費や備品費は、目前ではコストがかかっても揃えた方が後々手間や人件費の削減に繋がる場合があります。人材育成プロセスに関わる費用は従業員のモチベーションにも繋がるため、コスト削減は控えるのがおすすめです。
目次に戻る人材育成のコストを抑えつつ質を上げる方法
コストをかけるほど研修の質は上がるのかというと、決してそうではありません。コストを抑えつつ研修の質を上げる方法は存在します。
研修の質を保ちつつ、研修にかかるコストや労力のみカットするためには、研修の目的を明確にし、全体にかかる費用を総額で考えることが重要です。
目先では費用がかかるように感じても、長い目で見ればコスト・労力ともに削減できた、ということも少なくありません。費用対効果を意識した、人材育成のコスト削減方法として、研修に関わる業務を外部に委託したり、ITシステムを導入したりするのも有効です。
以下ではそれぞれの方法について、詳しく解説していきます。
研修の作成・実施を外注する
研修の作成・実施を外注する方法は、人材育成研修における質の向上とコスト削減の両方でメリットがあります。人材育成の研修を外部に委託すると人事の研修準備や採用にかかる労力、講師の負担を大きく軽減できるケースがあります。
また、外部委託する場合の業者は、人材育成を専門で行っている企業であることが一般的です。そのため、社内にはないノウハウを獲得できたり、人材育成に関する知識や指導力が担保されていたりするのも、大きな魅力といえるでしょう。
大手人材育成企業は、これまでのさまざまな実積やノウハウで安心できる分、用意された研修の中から、できるだけ自社のニーズにマッチしたものを選ぶ必要があり、研修内容によってはズレが生じる危険があります。
その点フリーランスの講師だと、自社に合わせて研修内容を作成してくれる場合もあるため、企業の大きさに捉われず、各社のサービス内容をしっかり把握して研修会社を選ぶことが大切です。
目標設定と振り返りを実施する
研修内容を効率的かつ実践に活かしてもらうための方法として、毎回目標設定と振り返りを行い、研修内容を定着させる方法があります。人事評価でも、「研修内容がいかに現場で活かせているか」を軸に評価項目を作成すれば、研修自体の評価にも繋がるでしょう。
評価の達成率に応じて社員表彰やインセンティブがあれば、従業員の研修へのモチベーションもアップにもなり、結果として退職率を減らせるメリットも考えられるでしょう。
ITシステムを活用する
最もリスクが少なく、かつ質を維持したままコストを削減できる可能性が高い方法としておすすめなのが、ITシステムを活用することです。例えば、集合研修を廃止してオンラインにしたりeラーニングを活用したりすることで、交通費や宿泊費、会場費のコストが削減可能です。
ITシステムを活用して人材育成を行う場合、インターネット環境さえあれば時間や場所を問わず、何度でも研修内容を振り返ることが可能です。従業員が自分のペースで学べるため、研修内容の理解が行き届きやすくなるでしょう。
また、研修内容について撮影・編集を一度してしまえば、次年度以降は研修の企画・撮影などの時間もカットできます。自社に合わせて研修内容をカスタマイズし、改善を繰り返せる点も魅力です。
目次に戻る質を維持・向上させつつ人材育成コスト削減に成功した事例
人材育成コストの削減方法は、企業の形態によっても様々です。自社の課題や人材育成における目的を明確にすると、研修自体の質を落とさずコストカットが実現できるでしょう。
以下では、コスト削減に成功した企業の事例を2つ紹介します。
大手コンビニチェーンの事例
以前までは研修のたびに各店舗の社員を集めなければいけなかったため、シフトの調整や研修の案内などにかかる時間や手間が発生していました。
会場費、交通費、宿泊費などのコストも大きいことから、課題を解決するためにeラーニングとオンライン研修を導入した結果、集合研修の頻度を3分の2に削減することに成功。集合研修にかかる労力・コストを削減できました。
eラーニングを活用すれば、社員の属性に合わせた研修の提供が可能になり、より効率的に人材育成のプロセスを回すことが可能です。社員一人ひとりの研修進捗状況やテストの結果が確認できるので、確実なスキルアップに役立っています。
大手学習塾の事例
学習塾では事業の特性上、研修時間の確保は不可欠です。しかし、講師の多くが大学生や大学院生のため、10時間以上の初期研修時間を確保するのは指導者側・受講者側の両方で負担が大きいことが課題となっていました。
そこでeラーニングを導入し、集合研修の回数を削減したことで、研修費用を25%削減することに成功しました。研修準備にかける労力をカットできたことで、指導者が他業務に専念できるようになり、作業効率もアップしました。
eラーニングは時間・場所を選ばず、学習者の都合や理解度に合わせた学習が可能です。現場で戦力化するまでの期間を短縮でき、即戦力人材を効率的に増やせるようになりました。
目次に戻る人材育成にかかるコスト・労力の削減にはeラーニングがおすすめ
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eラーニング資料を一度作成・共有すれば繰り返し使用できるため、研修準備にかかる労力も削減可能です。カットして浮いた分、違う業務に割けるので事業の運営に集中できるでしょう。研修の度に集合せずに済み、資料印刷・会場費・交通費・宿泊費などの費用カットにも繋がります。
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